2024.06.18
クリニック奮闘記
Vol.709 原点に立ちかえるクリニック経営
令和6年度の診療報酬改定におけるクリニックに関連する主要な改定点は以下の通りですが、周知のとおり算定に際してはかなり厳しい内容のものもあります。繰り返しになりますが、内科医系のクリニックにおいては、特定疾患療養管理料の算定が難しくなってきた中で、いかにして収益を確保するのかを必死になって考えなければなりません。テクニックで対応できる部分もあるかもしれませんが、そこには継続性はありません。むしろ今こそ原理原則に沿った経営が求められているのだと考えるべきではないでしょうか。
令和6年度の診療報酬改定点を今いちど整理してみます。
■令和6年度診療報酬改定概要
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生活習慣病管理料:
- 生活習慣病管理料(Ⅰ)は40点引き上げ、(Ⅱ)は333点となる。
- 療養計画書が簡素化され、電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、血液検査項目の記載が不要。
- 月1回以上の総合的な治療管理要件が廃止され、約4か月に1回の管理で可
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かかりつけ医機能:
- 地域包括診療加算および認知症地域診療加算が3点引き上げ。
- 非常勤職員等による時間外対応加算2が新設され、4区分の評価となる。
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短期滞在手術等基本料:
- 対象手術の評価が見直され、麻酔の有無による評価から、主として入院で実施する手術とそれ以外に分けられる。
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リハビリテーション:
- 訓練実態を把握するため、実施職種ごとの区分に変更。
- リハビリテーション計画料は廃止され、計画書の提供が義務付けられる。
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医療DXの推進:
- 電子処方箋の普及、電子カルテ情報共有サービスの構築と情報範囲の拡大
- マイナンバーカードを活用した情報連携の実現
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医師の働き方改革:
- 労働時間短縮と健康確保のための措置を整備
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在宅医療:
- 在宅医療と訪問看護の点数や要件の見直し。
■経営戦略について
これらの診療報酬改定点に対応するため、クリニックが取るべき経営戦略を以下にまとめます。
1. 生活習慣病管理の強化
生活習慣病管理料の引き上げに伴い、生活習慣病患者に対する管理を強化することが重要です。これは特定疾患療養管理料の算定が難しくなったクリニックにとっては最重要課題となります。具体的には、以下の点を考慮します。
- 電子カルテ情報共有サービスの活用:電子カルテを導入し、情報共有を促進することで、療養計画書の作成を簡素化し、医療スタッフの負担を軽減します。
- 血糖自己測定指導加算の活用:血糖自己測定指導を積極的に行い、加算点数を取得することで収益を増やします。
- 患者教育の充実:患者に対する生活習慣改善の指導を強化し、定期的なフォローアップを行うことで、患者の健康維持とクリニックの信頼性向上を図ります。
2. かかりつけ医機能の充実
地域包括診療加算や認知症地域診療加算の引き上げに対応するため、かかりつけ医機能を強化します。
- 連携の強化:介護支援専門員や地域の医療機関との連携を強化し、包括的な医療サービスを提供します。
- 認知症対応力の向上:医師やスタッフの認知症対応力を向上させ、認知症患者に対する適切な診療を提供します。
- リフィル処方の活用:長期処方やリフィル処方を活用し、患者の利便性を高めるとともに、クリニックの業務効率を向上させます。
3. 短期滞在手術の推進
短期滞在手術等基本料の評価見直しに対応し、日帰り手術の実施を推進します。
- 手術の適切な分類:入院外での手術を増やし、評価点数の高い手術を適切に分類することで収益を最大化します。
- 麻酔管理の効率化:麻酔の有無に関わらず、手術の実施体制を整え、効率的に手術を行うことで患者満足度を高めます。
4. リハビリテーションの充実
リハビリテーションの実施体制を整え、適切な報酬を得るための戦略を立てます。
- 職種ごとの区分に対応:リハビリテーションを実施する職種ごとの訓練実態を把握し、適切な報酬を得るための体制を整えます。
- 計画書の提供:介護保険サービスへの移行時には、リハビリテーション実施計画書を適切に提供し、患者の円滑な移行をサポートします。
5. 医療DXの推進
医療DXの推進に対応するため、デジタル技術を活用した診療体制を構築します。
- 電子処方箋の導入:電子処方箋を導入し、処方箋の管理を効率化することで、患者への迅速な対応を可能にします。
- 電子カルテの拡充:電子カルテの情報共有範囲を拡大し、他の医療機関や介護施設との情報連携を強化します。実務的には難しい問題をはらんでいますが、情報旧友の進んでいない医療業界では避けられないテーマの一つです。
- マイナンバーカードの活用:マイナンバーカードを活用した情報連携を推進し、患者情報の管理を効率化します。
6. 働き方改革の実施
院長やスタッフの働き方改革を推進し、労働環境を改善します。
- 労働時間の短縮:医師やスタッフの労働時間を短縮し、健康確保のための措置を講じます。単に労働時間を短縮するのではなく、患者サービスを低下させることなく業務効率を上げる必要があります。従来の業務フローを見直すだけでなく、医療DXの推進やレセプト請求の外注化などを検討することで改善につなげていきましょう。
7. 在宅医療の拡充
在宅医療と訪問看護の提供体制を強化し、地域に密着した医療サービスを提供します。
- 在宅医療の充実:在宅医療の提供体制を整え、患者が自宅で適切な医療を受けられるようにします。
- 訪問看護の強化:訪問看護の提供体制を強化し、患者の生活を支援します。
今回の診療報酬改定はクリニックにとってプラスに働いているとはいえません。いかしながら国が考えている将来の医療施策を読み解く上でのメッセージとして考えなければなりません。経営に正解はありませんが、今一度、原点に立ち返り、原理原則に基づいたクリニック経営を考えてみましょう。