Vol.736 「窓口業務の向こう側にあるもの」(3日目)

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クリニック奮闘記

2024.09.05

クリニック奮闘記

Vol.736 「窓口業務の向こう側にあるもの」(3日目)

ルールどおりに仕事をすることで上手くいかないことがあります。ときには柔軟に対応することで問題が大きくならず、上手く収まることもあるのです。本日のお話は、窓口業務を行っている受付スタッフの対応の一場面です。

1. 一筋縄ではいかない患者

午前の診療が始まると、受付業務は一気に忙しさを増していった。医療事務の佐々木さんは、患者からの問い合わせに対応しながら、診察券の確認やカルテの準備を並行して進めていた。そこに、少し険しい顔をした中年男性がやってきた。

「すみません、今日は診察が早く終わるようにしてもらえませんか?」その男性は急ぎの様子でそう言った。

「申し訳ありませんが、予約順で診療を行っておりますので、順番にお呼びいたします。」この様に丁寧に説明したが、男性は納得がいかない様子だった。

「いや、私は時間がないんです。何とかならないですか?」男性の声が次第に大きくなり、周囲の患者たちもその様子に気づき始めた。

2. エスカレートするトラブル

佐々木さんは、何とかこの場を収めようと冷静に対応を続けたが、男性の怒りは収まらなかった。「これじゃあ、こっちの都合なんか全く考えていないってことですよね!」彼の声はさらに大きくなり、待合室全体に響き渡った。

他の患者たちがざわつき始め、受付カウンターの後ろでは、看護師やスタッフが心配そうに様子を伺っていた。

これ以上の騒ぎを避けるため、男性を別室に案内しようとしたが、彼は動こうとしなかった。「ここでいいです、どうせ無駄なんでしょう?」彼の言葉には諦めと怒りが入り混じっていた。

3. 問題の根本に迫る

佐々木さんはその場で男性に寄り添い、さらに詳しく話を聞くことにした。「何かお困りのことがありましたら、できる限り対応いたしますので、お聞かせください。」

男性は、しばらく黙ったまま考えていたが、やがて小さな声で「実は、今日どうしても会社に行かなきゃならないんです」と語り始めた。彼は、職場で重要な会議があり、そのために早く診察を終わらせたいという事情があったのだ。

「なるほど、それは大変ですね。少しお待ちいただければ、先生にご相談してみます。」その場で医師に事情を伝え、対応を依頼した。

4. 患者との信頼の再構築

その後、佐々木さんは男性に対し、「先生と相談した結果、可能な限り早く診察できるように調整しました」と伝えた。男性は、少し安心した様子で「すみません、ちょっと言い過ぎました」と頭を下げた。

「いえ、お気になさらないでください。お仕事も大事ですから、できる限り対応させていただきます。」佐々木さんは微笑みながら答え、男性の緊張をほぐすように努めた。

診察が終わり、男性は再び受付カウンターに戻ってきた。「本当に助かりました。ありがとうございました。」その言葉に、美咲は心の中で安堵し、微笑んで見送った。

5. 窓口に求められる柔軟性

その日の午後、美咲はふと考えた。受付業務は単なる窓口対応ではなく、患者一人ひとりの状況に寄り添い、適切な対応をすることが求められている。時には困難な場面に直面することもあるが、その中で患者との信頼を築くことができれば、その価値は大きい。

「受付業務って、ただの事務作業じゃないんだな。」佐々木さんは、改めて自分の仕事に対する誇りを感じた。

6. 明日への教訓

その夜、一日の業務を振り返りながら、自分に問いかけた。「今日はうまく対応できたけど、もっといい方法があったかもしれない。明日はどうしよう?」

患者とのトラブルは、避けられないものだ。しかし、その中で何を学び、どう成長するかが大切だと感じた。窓口の向こう側には、さまざまな人々の人生がある。その一端に触れることができる自分の仕事に、誇りと責任を持ちながら、明日もまた頑張ろうと決意を新たにした。