2024.09.30
クリニック奮闘記
Vol.756 50代からの医療事務スタッフの働きかた
小宮さんは、クリニックで長年事務スタッフとして働いています。 50代の彼女は、クリニックの業務に精通しており、特にレセプト業務では頼りにされていました。問題が起こったのは電子カルテの導入が決まったときです。
来る日も来る日も、電子カルテの操作に不慣れな事務スタッフは、慣れていたはずの日常業務にも支障が出ています。パソコンとにらめっこの毎日で、何か新しい業務が入ってきても、「忙しいから後にしよう」ということで、未決事項が増えていくばかりです。
小宮さんはレセプト業務に集中していたある日のことです。彼女の勤務するクリニックのレセプトは、小宮さんにしか分からない特殊な処理が多く、そうかといって他のスタッフにはなかなか教えようとはしません。そのため、レセプトの締め切り間近まで残業が当たり前ということが日常化していました。
当然、中村院長はこの状況を理解しています。電子カルテへの移行がスムーズに進まないだけでなく、レセプト業務も小宮さんに依存しすぎています。この状況を打開するために、スタッフ全員を集めてミーティングを開くことになりました。
「皆さん、今日は少し時間をとって、業務の改善についてお話ししましょう。電子カルテへの移行がうまく進まないですし、レセプト業務も小宮さんに頼りすぎている状況です。皆さんで力を合わせて、業務をもっとスムーズにするように考えていきましょう。」
スタッフたちはお互いに顔を見合わせ、特に50代以上のスタッフたちは不安げな表情を浮かべていました。 そもそも彼女たちはシステムに対して強い抵抗感を持っており、現状を変えることに対して消極的だった。
「中村院長、確かに電子カルテは便利かもしれませんが、私たちには少し難しいです。覚えるまでに時間がかかりますので...」と、一人のスタッフが言った。
「もちろん、すぐにすべてを変える必要はありません。ただ、皆さんで少しずつ慣れていけば、今の業務ももっと楽になるはずです。小宮さんも、みんなにレセプト業務を教えてください。皆さんで分担して業務ができるようにあれば、小宮さんも楽になるし、有給も気にせず取得できるようになりますよ。」
この言葉に、小宮さんは少し戸惑いました。自分の仕事を他のスタッフに譲ることに対する不安もあったが、同時に中村院長の言葉に心を動かされたのでした。
「確かに、レセプト業務は一大事だと感じています。私一人で抱え込んでしまうより、皆さんと一緒にやったほうがいいかもしれませんね。」小宮さんは少し微笑みながら言った。
その後、小宮さんは少しずつレセプト業務の知識を他のスタッフに共有し始めました。 最初は教えることに戸惑いもありましたが、若手スタッフが熱心に学んでいる姿を見て、少しずつその意義を実感すると同時に、電子カルテの操作も、少しずつですがスタッフ達と一緒に練習を重ねました。
数ヶ月後、クリニックの業務は以前よりスムーズに回り始めました。レセプト業務も複数のスタッフが対応できるようになり、小宮さんの負担は軽くなりました。彼女は次第に、教えることのやりがいを感じ始めていました。新人スタッフが一つ一つの業務を振り返りながら業務を行い、その結果、自信を持って仕事に向き合っている姿を見ていると、自分もチームの成長に貢献しているのだと実感できるのです。
「小宮さん、最近の事務スタッフの様子は、本当に良くなりましたね。あなたの協力があってこそですよ。」
小宮さんは少し考えて、ゆっくりと答えました。 「最初は、自分だけでやっていた方が楽だと思いました。でも、みんなで協力することで、仕事の効率も上がり、私自身も成長しました。他のスタッフに教えてあげていることが、実は、自分が勉強していることにもなっているんですね。」
中村院長は、「その通りです。チーム全体が成長していくことで、クリニック全体も強くなります。これからも一緒に頑張りましょう。」
小宮さんは微笑みながら、心の中で新たな決意を抱いた。これからもクリニックの一員として頑張っていこう、そして自分自身の成長のためにも努力を続けていこうと。
こうして小宮さんはクリニックで医療事務として働くことのやりがいを見つけ、さらに高いモチベーションで仕事ができるようになったのです。