2024.10.15
クリニック奮闘記
Vol.763 連携不足が招いたできごと
スタッフ間の連携不足が招いた出来事
横浜在宅クリニックで、ある出来事が起こった。それは、ベテラン訪問看護師の恵比寿さんが担当していた、認知症の患者さん、佐藤さんの急変だった。
佐藤さんは、普段から穏やかな方だったが、ある日突然、幻覚を見るようになり、興奮状態が続いた。恵比寿さんは、すぐに佐藤さんの自宅へ駆けつけ、状況を把握しようとした。しかし、佐藤さんは興奮状態がひどく、なかなか落ち着いて話を聞いてくれない。
恵比寿さんは、とりあえず佐藤さんを落ち着かせようと試みたが、一向に状態は改善しない。焦った恵比寿さんは、すぐにクリニックに連絡し、医師の指示を仰ごうとした。しかし、担当医の田中先生は、ちょうど外出中で連絡が取れない。
医療事務スタッフの立石さんは、田中先生の携帯電話に何度もかけ続けたが、つながらない。焦りを感じた立石さんは、他の医師に連絡しようとしたが、どの医師も対応できない状況だった。
一方、ケアマネージャーの木村さんは、佐藤さんの家族に連絡し、状況を説明した。家族は動揺し、すぐに駆けつける準備を進めた。しかし、佐藤さんの状態はどんどん悪化し、救急車を呼ぶ事態になった。
幸い、佐藤さんは一命をとりとめたが、この出来事はクリニック全体に大きな衝撃を与えた。
なぜこのような事態になったのか?
この出来事を振り返り、スタッフたちは、以下の点が問題だったと認識した。
- 情報共有の不足: 恵比寿さんは、佐藤さんの状態の変化を他のスタッフに十分に伝えていなかった。
- 連絡体制の不備: 田中先生の不在時における連絡体制が確立されていなかった。
- 多職種連携の不足: それぞれのスタッフが自分の役割に集中しすぎており、他のスタッフとの連携が不足していた。
スタッフ間の連携の重要性
この出来事をきっかけに、横浜在宅クリニックでは、スタッフ間の連携を強化するための取り組みが始められた。
- 定期的なミーティングの実施: 毎週、スタッフ全員が集まり、患者さんの状態や課題について共有する。
- 緊急時の連絡体制の確立: 田中先生の不在時における連絡体制を明確にし、緊急時に迅速に対応できる体制を整える。
- 多職種連携の強化: 各スタッフが、それぞれの専門性を活かしながら、チームとして患者さんにアプローチする。
- 教育研修の充実: スタッフの知識やスキルアップを図るための教育研修を積極的に実施する。
教訓
この物語は、スタッフ間の連携の重要性を改めて示している。一人ひとりが自分の役割をしっかりと果たすことはもちろん大切だが、チームとして連携することで、より質の高い医療を提供できる。
特に、訪問診療のように、患者さんの自宅を訪問して医療を提供する場合は、予期せぬ事態が発生する可能性も高い。そのため、スタッフ間で密な連携を築き、緊急時にも迅速に対応できる体制を整えておくことが不可欠である。