2024.11.05
クリニック奮闘記
Vol.779 内科クリニックのミニマム開業の事例検討
前回はミニマム開業とは何かということを包括的にお話をさせて頂きましたが、もう少し具体的なお話をしていきたいと思います。
必要最低限のクリニックスペースと、医療設備および人員配置について考えてみたいと思います。
コロナ禍以降は、感染防止対策のためにクリニックが大型化に向かっています。これは必要な流れ一つではありますが、開業コストの上昇と診療報酬の縮小傾向を考えると、ミニマムでの開業も選択肢の一つとして入れておくことも必要です。
前提としては、初期費用を抑えるためにテナント開業を前提としておきます。
内科クリニックを行うにあたっての最低坪数は20坪です。
イメージとしては診察室と処置スペース、待合(4人~5人)と受付カウンターです。レントゲン装置は立位であれば何とかギリギリ格納できます。建築コストとしては2000万円程度は必要になってくるでしょう。一般的には40坪程度のクリニックが多いのですが、この場合は3000万円を超える建築コストが発生します。
次に、スタッフの人員配置について考えてみましょう。
看護師は1人雇用もしくは雇用しない。全てを院長一人で行うことになりますが、ひと月30万円程度の人件費は削減できます。
事務スタッフは1人体制で、基本的には待時間の患者の見守りと電話対応です。受付は自動チェックインシステムと自動会計システムを活用すれば、受付業務は問題なく熟すことができます。問題はレセプト業務ですが、こちらは外注する必要があると思われます。診察時間中に院長が仕上げていく、もしくは受付スタッフが業務の合間にレセプトチェッカーを駆使しながら完成させることは可能ですが、あまり実務的ではないと思われます。受付業務に専念してもらって、レセプトは品質を担保する意味でも外注が適当であると思われます。
最後に設備機器についてお話をまとめておきます。
立位のエックス線装置、CR、電子カルテと自動予約受付システム及び自動会計システムで全てです。エックス線装置もポータブルならもっと小規模でできるかもしれません。
毎月のランニングコストは、クリニック家賃と受付スタッフ(パート)の人件費のみです。血液検査やレセプトは外注することで費用を変動費化することができます。
この様にしてコストは最小化することはできますが、問題は集患活動です。不安だらけの患者が殺伐としたクリニックに行きたいと考えるかという点です。
狭くて窮屈な待合室と、医師と至近距離で向き合うことになる診察室、検査機器はエックス線のみ。武器は院長先生の医療技術と対応力です。
コスト削減はテクニック論として実現可能ではありますが、開業後のオペレーションは高度なマネジメントを求められるものになるでしょう。
システム(DX)で対応可能なことと、ソフト面でのサービスを切り分けてクリニック経営を考えていく必要があるでしょう。