Vol.809 医療人の常識と一般人の非常識

レセプト代行サービス メディカルタクト
TEL:06-4977-0265
お問い合わせ
backnumber

クリニック奮闘記

2024.12.16

クリニック奮闘記

Vol.809 医療人の常識と一般人の非常識

Aクリニックの院長である田中医師は、地域に根ざした温かい診療を心がけていた。ある日、初診の患者、木佐貫さんが訪れた。木佐貫さんは、長年の肩こりと頭痛に悩まされ、藁をもすがる思いでクリニックを訪れたという。

田中医師は丁寧に問診を行い、MRI検査を提案した。しかし、木佐貫さんは「MRIなんて大げさすぎる」と戸惑う。木佐貫さんの考えでは、肩もみと痛み止めを処方してもらえれば治ると考えていた。

看護師の佐藤さんは、木佐貫さんの不安に気づき、MRI検査の必要性について丁寧に説明した。「MRI検査は、痛みのもとになっている原因を詳しく調べるためにとても大切な検査なんです。痛み止めを飲んで一時的に症状を抑えるだけでなく、根本的な原因を治療することで、より長く快適に過ごせるようになるかもしれません。」

しかし、木佐貫さんは「そんなことより、とにかく早く痛みをなんとかしたい」と焦っていた。医療事務の中田さんは、木佐貫さんの保険証を確認し、検査費用について説明した。「MRI検査は保険が適用されますので、ご負担はそれほど大きくありません。」と伝えたが、木佐貫さんは医療費の負担を気にし、検査を拒否した。

このケースは、医療の常識と世間の非常識がぶつかり合った典型的な例と言える。医療者側は、患者の病気を正確に診断し、適切な治療を行うために、検査や精密な診断が必要だと考えている。しかし、患者側は、自分の症状を早く改善したいという気持ちから、検査や治療を拒否してしまうことがある。

両者のギャップを埋めるために

この問題を解決するためには、医療者と患者間のコミュニケーションをより円滑にすることが重要である。

  • 患者の話をよく聞く: 患者が抱えている不安や疑問に耳を傾け、共感することが大切です。
  • 分かりやすい言葉で説明する: 専門用語を避け、患者にも理解しやすい言葉で、検査や治療の必要性、メリット、デメリットを説明する必要があります。
  • 選択肢を示す: 患者に複数の治療法を提示し、それぞれのメリット・デメリットを説明することで、患者自身が治療法を選択できるようにすることが大切です。
  • 患者教育を行う: 病気について、患者自身が理解を深めるための情報を提供する必要があります。
  • チーム医療の推進: 医師だけでなく、看護師、医療事務など、チーム全体で患者に対応することで、よりきめ細やかなケアを提供することができます。

また、医療機関側も、患者との信頼関係を築くために、以下の点に注意する必要があります。

  • 待ち時間を短縮する: 患者が長時間待たされることで、不満が募ることがあります。
  • 予約システムの改善: 患者がスムーズに予約できるシステムを導入する。
  • 患者への情報提供: 診療時間や受診の手続きなど、患者が知りたい情報を分かりやすく提供する。

医療者と患者は、それぞれ異なる立場や価値観を持っているため、完全な一致を見ることは難しいかもしれません。しかし、お互いを尊重し、コミュニケーションを密にすることで、より良い医療を提供することが可能になります。

この物語を通して、医療現場で働く人々だけでなく、患者自身も、医療に対する理解を深めるきっかけになれば幸いです。