2024.12.25
クリニック奮闘記
Vol.815 財務戦略を中心にした経営計画のポイント
クリニックの経営計画(単年度計画)立案における財務戦略上のポイントをまとめてみたいと思います。単年度計画は、短期的な目標達成と経営の安定を図る上で非常に重要です。以下に、財務戦略に焦点を当てた立案のポイントをまとめます。
1. 現状分析(財務状況の把握)
- 過去の財務データ分析:前年度の決算書(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を分析し、収益性、安全性、効率性を評価します。
- 収益性: 売上高、粗利率、営業利益率、経常利益率などを分析し、収益構造の強みと弱みを把握します。
- 安全性: 自己資本比率、流動比率などを分析し、財務の安定性を評価します。
- 効率性: 医業未収金回転期間、棚卸資産回転期間などを分析し、資産の有効活用度を評価します。
- 同業他院との比較分析: 可能であれば、同規模・同診療科のクリニックの財務データと比較し、自院の財務状況を客観的に評価します。
2. 収支計画の策定
- 収入予測:
- 過去の患者数、診療単価、診療報酬改定の影響などを考慮し、収入を予測します。
- 新規患者獲得策、診療時間延長、新サービスの導入など、増収策を具体的に検討し、収入予測に反映します。
- 費用予測:
- 人件費、医薬品費、光熱費、家賃、広告宣伝費など、各費目を詳細に予測します。
- コスト削減策(例:医薬品の共同購入、業務効率化による人件費抑制)を検討し、費用予測に反映します。
- 損益計算: 収入予測と費用予測から、利益(または損失)を計算します。目標利益を達成するために必要な売上高や費用水準を明確にします。
- 収支分岐点分析: 固定費と変動費を把握し、損益がゼロになる売上高(損益分岐点)を分析します。目標売上高が損益分岐点を上回っているかを確認します。
3. 資金計画の策定
- 資金繰り計画: 収入と支出のタイミングを考慮し、資金繰り表を作成します。資金不足が発生する可能性のある時期を特定し、対策(例:短期借入、運転資金の確保)を検討します。
- 設備投資計画: 医療機器の更新、内装改修など、設備投資を計画する場合は、投資額、資金調達方法(自己資金、借入、リースなど)、投資回収期間などを検討します。
- 借入金管理: 借入がある場合は、返済計画を確認し、金利負担などを考慮した上で、適切な借入残高を維持するように管理します。
4. 財務指標の設定とモニタリング
- 主要な財務指標の設定: 売上高成長率、粗利率、営業利益率、自己資本比率、流動比率など、経営状況を把握するための主要な財務指標を設定します。
- 定期的なモニタリング: 設定した財務指標を定期的にモニタリングし、目標値との乖離を把握します。必要に応じて、経営計画や戦略を見直します。
5. リスクマネジメント
- 財務リスクの特定: 売上減少、費用増加、資金繰り悪化など、起こりうる財務リスクを特定します。
- リスクへの対応策: 特定したリスクに対する対応策(例:予備資金の確保、コスト削減策の準備、借入枠の確保)を事前に検討します。
具体的な施策例
- 医業未収金対策: 請求業務の効率化、患者への丁寧な説明、クレジットカード決済の導入などにより、医業未収金を削減します。
- 在庫管理の適正化: 医薬品や医療材料の在庫量を適切に管理し、無駄な在庫を削減します。
- コスト削減: 光熱費の節約、事務用品の共同購入、業務フローの見直しによる効率化などを推進します。
- 診療報酬請求の適正化: 診療報酬請求のルールを遵守し、請求漏れや過請求を防ぎます。
- 資金調達手段の多様化: 借入だけでなく、リースやファクタリングなど、資金調達手段を多様化することで、資金繰りの安定性を高めます。