2025.03.03
クリニック奮闘記
Vol.853 確定申告(納税)で考えること
確定申告がスタートして佳境に入ってきた時期かと思います。
個人診療所の院長先生におかれましては、一年で一番嫌な納税の時期の到来です。
一年間の総決算が確定申告ということになるのですが、クリニック経営の場合は他の業種と比べると利益率が高いこともあり、納税額は数千万円に及ぶこともよくあります。
先生方の中には節税対策ということで、年末に大きな買い物をした先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
今日ここでお話したいことは、納税額を意識することと同時に、青色決算書をしっかりと読んで欲しいということなのです。会計は素人には難しい所がありますが、ポイントさえ押さえれば最低限の理解はできます。
抑えるべきポイントは次の通りです。
①毎月の収入金額と年間の合計収入金額
②薬品及び診療材料費の金額と対収入費率(これは会計事務所が作成した損益計算書を参照してください)
③薬品及び診療材料の期末在庫残高
④人件費の総額と人件費率(職種別に分別されているとなお良いです)
⑤固定資産の明細
⑥借入金の期末残高
⑦現預金の期末残高
以上は最低限の項目です。毎年の数値を時系列に並べて比較するだけでも動きがよくわかると思います。
②は支出金額の大きな項目であり、医療機関にとっては管理すべき重要項目です。
対収入比率が目標数値内でクリアーになっているかをみましょう。併せて③の在庫金額も注視すべき項目です。在庫金額が大きいということは、医業収入を上げるために使われていない支出が、"倉庫"に眠っているということを意味しています。当然、購入のために資金が流出していますのでクリニックの資金繰りにも影響してくる項目です。
④の人件費については、金額の多寡だけをもんだいにするのではなく、安全性の担保と言う観点からも吟味すべきです。
⑤~⑦は設備投資に関連させた見方をしてください。節税のためという名目で、借入をして設備投資を行った場合、短期的には固定資産の増加による現金残高の減少がみられます。期末に設備投資が行われた場合は、すぐに医業収入に反映されませんので、財務基盤が弱体化してしまします。これを2期~3期を通して時系列でみることにより、設備投資の効果がどれ程であるかを見ることができます。設備投資は医業収入に貢献する支出であって、節税のための支出ではないことを押さえておきましょう。
普段は決算書を見ることがないと思いますが、年に一回、確定申告の時期だけでも決算書をじっくりと読み込んで、自院の経営を振り返ってみて下さい。