2025.05.14
クリニック奮闘記
Vol.895 【保存版】診療報酬の「新規指導」に備えるには?今すぐできる対策と直前準備
クリニック経営者にとって避けて通れない「新規指導」----
開業してから一定期間が経過した医療機関に対して行われる「新規個別指導」は、保険診療の適正化を目的として実施されます。突然の指導に慌てないためには、日頃の取り組みと直前準備の両面からの対策が重要です。
本記事では、診療報酬請求(レセプト)に関わる新規指導の概要と、その対策について具体的に解説します。
1. 新規指導とは?基本概要を押さえよう
新規指導とは、保険医療機関の指定を受けた医療機関が、初めて診療報酬を請求し始めた後に行われる個別指導です。おおよそ1〜2年以内に、地方厚生(支)局から通知が届くことが多く、"特定の問題があるから"ではなく、制度上予定されたプロセスであることがほとんどです。
2. なぜ新規指導が行われるのか
新規指導の目的は、以下の通りです。
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保険診療のルールを正しく理解してもらうこと
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不適切なレセプト請求を防止すること
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継続的に適正な診療報酬請求を行えるようにすること
つまり、新規指導は「教育的」な意味合いが強いのが特徴です。
3. 【日頃からできる】新規指導対策のポイント
日々の診療の中で、以下の点に意識して取り組むことが、新規指導対策として非常に効果的です。
3-1. 記載ルールを守ったカルテ記載
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SOAP形式の記載を意識(特に「O:客観的所見」「P:処置・投薬」)
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診療録とレセプト内容の一致を確認(例:処置を行ったなら処置料が算定されているか)
3-2. 点数算定の根拠づけ
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初診・再診、外来管理加算、在宅療養支援診療所など、加算の算定条件を熟知する
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不適切な「包括算定」や「出来高算定」を避ける
3-3. レセプト返戻・査定の把握と対策
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月次で返戻や査定理由を確認し、再発防止策を共有
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診療科特有のチェックポイント(皮膚科なら外用薬の過剰処方など)をリスト化
3-4. スタッフ教育とマニュアル整備
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医師・医療事務・看護師が同じ認識で診療報酬制度を理解していることが大切
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新人スタッフ向けに定期的な勉強会やマニュアル整備を実施
4. 【直前対策】通知が来たらすぐ行うべき準備
新規指導の通知が届いたら、以下の準備を迅速に進めましょう。
4-1. 診療録・レセプトの整合性チェック
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指定された期間(通常3ヶ月分程度)のカルテとレセプトを突き合わせて確認
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抜け・漏れ・不整合のチェックは外部の専門家の力を借りるのも有効
4-2. 提出書類の準備
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レセプト、診療録、患者基本情報、薬剤情報などを一覧で整理
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Excel等で患者別の請求内容が見やすい資料を作成すると◎
4-3. 面談の想定問答の準備
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「なぜこの加算を取っているのか」
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「この処置の医学的根拠は?」
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「レセプトとカルテがなぜ一致しないのか」
など、過去の指導事例を基に想定問答を準備
4-4. 当日の出席者を慎重に選ぶ
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原則として管理者(院長)と事務長が出席
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現場の実務を理解しているスタッフが同行できると、質問対応がスムーズに
5. まとめ:新規指導は「怖くない」
新規指導は「摘発」ではなく「教育指導」であることが多く、適切に準備すれば過度に恐れる必要はありません。
むしろ、レセプト請求の精度向上、スタッフの教育、院内業務の標準化のチャンスと捉えるべきです。