2025.05.19
クリニック奮闘記
Vol.904 なぜ「優秀な事務長」が中小病院に必要なのか?
事務長は、単なる"管理職"ではありません。
病院経営を俯瞰的に見渡し、診療部門・看護部門・事務部門をつなぐハブとして機能しながら、経営陣の意思決定を支える"実務のプロ"です。
事務長が果たすべき5つの役割
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経営戦略の実行支援
病院の中期的な経営方針に沿って、戦略を現場に落とし込む調整役となります。特に、医師の配置や稼働率、診療単価、ベッド稼働率など、診療報酬に直結するKPIの設計・管理が重要です。 -
現場の業務改善と組織マネジメント
事務部門に限らず、看護師や検査技師、リハビリ職など多職種とのコミュニケーションの円滑化を図るのも事務長の重要な仕事です。人間関係による離職や部署間トラブルの未然防止にもつながります。 -
診療報酬対策の実行
詳細は後述しますが、加算の取得や適正な算定、レセプト請求の精度向上など、増収に直結する施策を主導する責任者が事務長です。 -
ベンダー・外部業者との調整
電子カルテ、予約システム、レセプトソフトなど、ITインフラの選定・導入・運用管理も事務長が担うべき分野です。現場が使いやすい形に整備する"通訳"としての役割も求められます。 -
経営陣への報告と提案
理事長や院長に対し、経営状況を数字で"見える化"し、投資判断や改善施策について具体的に提案できるスキルが不可欠です。感覚ではなく、データに基づいた意思決定支援がカギを握ります。
中小病院が取り組むべき診療報酬の増収ポイントとは?
中小規模の病院が診療報酬上で成果を出すためには、「地味だが確実な積み重ね」が欠かせません。以下は実務上、即実行できる取り組み項目です。
1. 加算の取得と維持管理
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特定疾患療養管理料
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地域包括診療加算
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在宅療養支援病院の体制加算
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薬剤管理指導料の要件整備 など
→ 点数が高いにも関わらず、取得していない病院が多いです。必要な書類の整備や看護記録のフォーマット見直しで対応可能です。
2. レセプト精度の向上
→ 自動チェックツールの導入と併せ、医事課スタッフへの月例研修を行い、査定リスクの低減と漏れ請求の防止を図ります。
3. DPC準備と運用
→ 急性期病院ではDPC対応が必須です。診療録記載の標準化、診断名の精緻化により、点数の底上げが可能になります。
4. 患者単価の見直し
→ 自費診療との組み合わせ提案や、物販・検査パッケージの構成見直しにより、1人当たりの単価向上を目指します。
各部門間のコミュニケーションをどう支えるか?~事務長の"調整力"が鍵~
病院では「看護師と検査技師」「外来と病棟」「医師と事務」のように、部署をまたぐコミュニケーションのズレが致命的な問題を引き起こします。
その要因の多くは、「共通言語」の欠如と、「誰が責任を持つのか」が曖昧な体制にあります。ここで必要なのが、"調整型リーダー"としての事務長の存在です。
事務長は、院長や看護部長とは異なり、各部門に中立的な立場で入れるため、部門横断的な改善会議を主導したり、KPIを共通言語として現場に浸透させたりする役割が期待されます。
経営陣の意思決定を支える"参謀"としての事務長
病院経営は、もはや"医療だけ"を知っていれば成り立つ時代ではありません。
法改正、診療報酬改定、地域医療構想、医療DXの流れなど、環境変化に対応した判断が常に求められます。
事務長は、その意思決定の精度を高める「情報収集」「仮説提示」「効果予測」「リスク管理」の実行部隊としての役割も担います。
この視点を持つことで、病院は経営的に一歩前に踏み出せるのです。
まとめ|「事務長不在の病院経営」はリスクである
「事務長がいないから院長が何でもやっている」という体制では、いずれ限界が訪れます。
中小病院にとって、**経営感覚と医療知識の両輪を備えた"実務型事務長"**の存在は、単なる人材ではなく、"戦略資産"です。
当社では、医療機関に特化した経営支援・レセプト請求代行サービスを通じ、事務長不在による病院経営の課題解決をサポートしております。
「信頼できる事務長がいない」「現場と経営がかみ合っていない」とお感じの病院経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。