2025.05.19
クリニック奮闘記
Vol.905 レセプトを活用したクリニック経営改善のすすめ
~診療行為別分析とベンチマークを活用し、収益構造を見える化する方法~
クリニック経営において、「収益の改善」は永遠の課題です。多くの院長が人件費や家賃などの固定費に目を向けがちですが、診療報酬の内訳を可視化することこそ、経営改善の第一歩となります。その鍵を握るのが「レセプト情報」です。この記事では、診療行為別集計表を用いた分析手法を軸に、クリニック経営におけるレセプト活用術を解説します。
1. 診療行為別集計表を用いた経営分析とは?
診療行為別集計表とは、レセプト請求データをもとに、どの診療行為でどれだけの点数(=売上)を獲得しているかを可視化した一覧表です。
なぜ必要か?
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クリニックの主力診療行為がどれかを明確にできる
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医師の診療スタイルと収益性のギャップが把握できる
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不適切な算定漏れや過剰請求のリスクを検証できる
たとえば皮膚科で「皮膚科光線療法(加算込み)」の件数が少ない場合、設備投資との費用対効果の再検討が必要になります。逆に「処置料」が突出して高ければ、外用薬中心の処方が見直されるきっかけにもなります。
2. レセプト総括表の限界と、補完すべき分析視点
レセプト請求ソフトから出力できる**総括表(総点数・実日数・総件数)**は便利ですが、以下のような限界があります。
限界点
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総点数だけでは「何で稼いでいるのか」が見えない
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実日数や件数だけでは生産性がわからない
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診療内容の内訳がないため、対策が立てられない
これにより、例えば「患者数が減っているから売上が減った」と思い込んでいる場合でも、実際は診療単価の低下が要因だったということも少なくありません。
3. 会計事務所やコンサル会社が提供するベンチマークの活用
多くの開業医が頼りにする会計事務所では、**損益計算書に基づく業種平均との比較(ベンチマーク)**を提供しています。これらは人件費率や材料費率、家賃比率などの「コスト構造の比較」には有効ですが、収益構造の深掘りには限界があります。
組み合わせのコツ
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【会計データ】で「支出構造」を可視化し、
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【レセプトデータ】で「収入構造(診療内容別)」を分析する
この両輪での経営分析が、継続的な改善に結びつきます。
4. レセプトを活用した経営改善が有効な理由
なぜレセプトが経営改善の武器になるのか?
その答えは、「すべての診療行為が売上の源泉である」という事実にあります。
有効な理由
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医師の診療内容を客観的に評価できる
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スタッフの業務負担と収益のバランスを調整できる
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保険点数の算定ルールに基づき、増収可能な改善点を見つけやすい
たとえば、在宅患者訪問診療料の管理料の算定漏れがあれば、即座に対応可能。月数万円単位のロスが、年間数十万円規模の差となるケースもあります。
まとめ:今こそ、レセプトで経営改善を。
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レセプトは単なる「請求の道具」ではありません。
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クリニックの強みと課題を診療行為レベルで可視化できる分析ツールです。
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ベンチマークや財務データと組み合わせることで、継続的な経営改善が可能となります。
当社では、診療行為別分析に基づく収益改善コンサルティングおよびレセプト請求代行サービスを提供しています。