2025.05.26
クリニック奮闘記
Vol.910 保険請求の新規指導が行われた実際の事例
【事例1:初診・再診の取り扱いが不適切と指摘されたケース】
■クリニック概要
・診療科:内科
・開業後:約8ヶ月目で新規指導
・月間レセプト枚数:約600枚
■指摘内容
・初診と再診の区別が曖昧。
→初診料の算定が適切でないケースが複数見られた。
・6ヶ月以上経過した場合でも、再診で算定していた事例あり。
■改善指導のポイント
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医師が「6ヶ月ルール」の正確な理解をしていなかった。
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過去のカルテ参照ができていたことを理由に再診扱いにしていたが、これはルール違反。
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指導後、院内で「初診・再診の判断基準チェックリスト」を作成し、事務と医師が確認できる体制を構築。
【事例2:在宅医療の指導管理料の算定根拠が不明確なケース】
■クリニック概要
・診療科:在宅診療中心
・訪問患者数:約40名/月
■指摘内容
・在宅患者に対して「在宅時医学総合管理料(在医総管)」を算定していたが、
管理計画書に記載が不足していた。
・また、訪問診療の目的や内容の記載がテンプレートのみで、個別性が乏しいと判断された。
■改善指導のポイント
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厚生局からは「患者個別の状態に応じた指導がなされている証拠を、カルテや指導記録に明示すること」との指導あり。
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診療内容を「テンプレート+個別コメント」に分けて記載。
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医療事務が診療前に「指導記録の記載漏れチェックリスト」を使って医師に確認する運用を導入。
【事例3:返戻・査定件数が多く、請求内容の整合性が疑われたケース】
■クリニック概要
・診療科:整形外科
・特徴:自費診療と混在運用
■指摘内容
・レセプトの返戻件数が多く、全体の約5%に達していた。
・特に「ブロック注射」「関節注射」などの部位記載がカルテに見られず、算定根拠が不明確とされた。
・自費と保険の使い分けが曖昧な事例も報告された。
■改善指導のポイント
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医師と医療事務間の記録連携が不十分だった。
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指導後は、「注射部位・目的・施行医師名の記載徹底マニュアル」を作成し、カルテ記載の質を向上。
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自費診療との区分も明確にし、受付時に診療区分の確認票を導入。
【まとめ:新規指導では"書面と実態の整合性"が重要】
どの事例にも共通しているのは、
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診療報酬の算定要件の理解不足
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カルテ記載とレセプト内容の不一致
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医師と事務の連携の甘さ
です。
これらは事前に、
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チェックリストやテンプレートの活用
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スタッフ間の定期的な情報共有
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直近レセプトの自己点検
で回避できます。