Vol.913 ベテラン事務スタッフが突然辞めたら? ― レセプト業務「属人化」の怖さと対策

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クリニック奮闘記

2025.06.02

クリニック奮闘記

Vol.913 ベテラン事務スタッフが突然辞めたら? ― レセプト業務「属人化」の怖さと対策

 ●「あの人がいないと回らない」体制がもたらすリスク

開業から数年経ち、診療が軌道に乗ってきたあるクリニック。
その現場で起きたのは、「レセプトのプロ」と頼りにしていたベテラン事務スタッフの突然の退職でした。

その結果、残ったスタッフはレセプト業務の詳細を知らず、月初10日の提出期限が迫る中でクリニックは大混乱。急ごしらえのマニュアル作りや、医師自らがレセプトをチェックする羽目に......。
結果的に請求ミスが相次ぎ、収入減少と職場の疲弊を招く事態になってしまいました。


● 属人化とは何か?「知識・スキルのブラックボックス化」

属人化とは、特定の人物にしか業務の全体像やノウハウが分からない状態を指します。レセプト業務においては特に以下の点が属人化しやすい領域です:

  • 点数算定のルール解釈(例:皮膚科の処置+投薬併算定)

  • 傷病名の付け方とレセプト通過率の関係

  • 査定対応時の再請求方法ややりとりの記録

このような「頭の中にある知識」が文書化されていない場合、担当者が不在になった瞬間に組織としての学習や継承が困難になります。


● 「二重化」「見える化」で属人化を防ぐ

属人化リスクを回避するための基本は、以下の2点に集約されます:

  1. 業務の二重化(2人以上で対応できる体制)

  2. 業務手順の見える化(マニュアル・運用記録)

例えば、

  • 診療報酬改定時には全スタッフで勉強会を実施

  • 査定内容と対応履歴はレセプト管理ノートに記録

  • 電子カルテ操作手順やレセプト確認のチェックリストを整備

といった具体的な工夫が、業務の再現性と継続性を高める鍵になります。


● 外部委託でリスクを分散する選択肢

ただし、人的資源が限られたクリニックでは、複数名体制の維持や教育に限界があります。そこで有効なのが、外部の専門業者との連携による分業体制です。

当社では以下のような「属人化リスク分散型」のレセプト支援を実施しています:

  • 各月のレセプト内容と査定履歴を全件データ化・報告

  • 院内スタッフとも共有可能な「チェックリスト型管理表」作成

  • 不測の欠員時もスムーズに業務をカバーできる人材体制


● 【図表】属人化対策のチェックリスト

□ レセプト業務の手順書が存在する
□ 担当者以外でも入力・確認ができる
□ 査定や返戻の対応履歴が記録されている
□ 電子カルテ操作マニュアルが院内にある
□ 担当者が急に休んでも対応可能な仕組みがある

● まとめ:人に依存しない「仕組み」が経営の土台

クリニック経営における最大のリスクは、「特定の人しか分からない仕事」が存在することです。

レセプト業務の属人化を防ぐには、「誰がやっても同じ品質」で請求業務が回る仕組みづくりが欠かせません。その第一歩は、日常業務の棚卸しと標準化、そして必要に応じた外部連携の活用です。