Vol.915 キャッシュフローが悪化するクリニック経営の落とし穴とは?

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クリニック奮闘記

2025.06.02

クリニック奮闘記

Vol.915 キャッシュフローが悪化するクリニック経営の落とし穴とは?

● 「黒字倒産」を防ぐために知っておくべき医療機関の資金繰りの構造

クリニック経営においてよくある誤解が、「収支が黒字なら安心だ」という認識です。しかし、実際には「儲かっているのに手元資金が足りない」という現象が起きがちです。これは「黒字倒産」とも呼ばれ、特に保険診療が中心の医療機関では起こりやすい問題です。

最大の原因は、保険診療の入金までのタイムラグ。診療報酬は、レセプトを毎月10日に提出してから、審査支払機関による審査を経て、約2ヶ月後に入金されます。その間に発生する家賃・人件費・薬品代などの支出は先に発生するため、手元資金が枯渇するのです。

さらに、返戻(査定・差し戻し)が発生すれば、さらに入金が遅れ、経営に深刻な影響を与えることもあります。


● キャッシュフロー経営の要:「資金繰り表」で見える化する

クリニックが健全な経営を続けるためには、「資金繰り表」を作成し、以下のようなポイントを押さえることが重要です。

<資金繰り表に含めるべき要素>

  • 月次の診療報酬入金予定日と金額

  • 固定支出のスケジュール(家賃、スタッフ給与、リース料など)

  • 変動支出と一時的支出の見通し(例:医療機器の購入、内装工事費)

  • 借入返済スケジュール

たとえば、4月の診療報酬は5月10日に提出し、6月中旬に支払われます。この2ヶ月のズレを念頭に入れ、3ヶ月先までのキャッシュポジションを見える化することで、突発的な資金不足に対応できるようになります。


● レセプト業務の質がキャッシュフローを左右する

レセプト業務の精度は、キャッシュフローに直結します。以下のようなケースでは入金が遅れ、クリニックの運転資金に深刻なダメージを与える可能性があります。

  • レセプト提出の遅延:提出期限を過ぎると1ヶ月以上入金が遅れる

  • 返戻の多発:不備のある請求が差し戻され、再提出・再審査でさらに遅延

  • 査定(減点)による収入減:医師が知らぬ間に不適切な請求をしていたケースも

レセプト業務の正確性とスピードを担保するためには、スタッフの教育、チェック体制、または外注の活用が鍵になります。


● 外注化で安定した資金計画を実現する

特に中小規模のクリニックでは、レセプト業務をプロに外注することで以下のメリットが得られます。

  • 提出遅れ・ミスの防止

  • 月次の査定・返戻状況の分析レポート

  • 入金見込み額の予測による資金繰り改善

  • トラブル対応(保険者との折衝等)の代行

資金繰り表と連動してレセプト管理を行えば、先を見据えた意思決定(例:スタッフ採用、設備投資)も可能になります。


● ケーススタディ:月商800万円の皮膚科クリニックが外注導入で改善した例

大阪市内の皮膚科クリニックでは、レセプト業務を事務長が兼務していたため、提出の遅れと返戻の多さが慢性化。外注化により、月平均150件あった返戻が30件以下に減少し、入金時期も安定。これにより資金繰り表の精度が向上し、診療報酬債権をもとに事業用ローンの資金調達にも成功しました。