Vol.928 返戻が多発していた皮膚科クリニックの個別指導

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クリニック奮闘記

2025.06.24

クリニック奮闘記

Vol.928 返戻が多発していた皮膚科クリニックの個別指導

近年、レセプトの返戻件数が増加しているクリニックに対して、厚生局による個別指導が実施されるケースが増えています。本事例では、大阪市内にある皮膚科クリニックが厚生局から個別指導を受けた実例を紹介し、その指摘内容と改善点について解説します。

背景と経緯

当該クリニックは年間約10,000件のレセプト請求を行っており、皮膚疾患の処方中心の外来を行っています。しかし、過去1年間でレセプトの返戻率が10%を超える月が続き、近畿厚生局から「レセプト内容に係る不適正請求の疑いがある」として新規個別指導の通知を受けました。

指摘された主な内容

1. 特定疾患療養管理料の要件不備

指摘の中で最も重視されたのが、特定疾患療養管理料の算定根拠不足です。該当管理料は、対象疾患に対する長期的かつ継続的な管理が前提となりますが、診療録には疾患名の記載のみで、具体的な生活指導内容や血液検査所見、処方意図などが記録されていませんでした。

2. 診療録の記載不足

保険請求において、診療録の記載は非常に重要です。厚生局は、「記載なき請求は認められない」という原則を強調しており、特に管理料や加算の算定にあたっては、必要事項の明記が求められます。本クリニックでは、SOAP形式の記録が曖昧で、所見欄に「悪化なし」「同様」などの表現が多く見られ、具体性を欠いていました。

3. 再診料の安易な算定

皮膚科診療では、経過観察や継続処方が中心となるケースが多く見られますが、本クリニックでは実質的な診察が行われていないにも関わらず、再診料が算定されていたケースが複数確認されました。とくに、診察内容が「変わりなし」「同薬処方継続」のみで、視診・問診・触診などが行われた記録がない場合は、再診料として不適切とされました。

クリニックでの改善内容

1. 記録テンプレートの導入

特定疾患療養管理料に対応するため、対象疾患ごとに記録テンプレートを作成し、所見、指導内容、検査結果、生活習慣へのアドバイス内容を標準化しました。これにより、レセプト請求の正確性が向上し、再審査や返戻が大幅に減少しました。

2. レセプト点検体制の強化

レセプト請求については弊社(メディカルタクト)と連携し、毎月のレセプト点検業務をダブルチェック体制としました。第三者視点による確認により、管理料・加算の適正性が担保され、内部の見落としが防げるようになりました。

3. 院内職員研修の実施

レセプトに関する知識が乏しかったため、「保険請求対策セミナー」を実施し、院長および看護師、医療事務スタッフが管理料の要件、加算のルールについて理解を深めました。

成果と今後の展望

改善後の返戻率は1.5%以下に抑えられ、厚生局からの再指導通知もなくなりました。また、スタッフの記録意識が向上し、クリニック全体としてレセプトの精度が安定するようになりました。

今後は、定期的にレセプト点検会議を開催し、法令改正に応じた請求内容の見直しを続けていく方針です。

まとめ

本事例は、特に管理料に対する記録の不備がレセプト返戻と新規指導の原因となった典型例です。適正なレセプト請求を行うためには、診療録の充実と外部点検体制の構築が不可欠です

クリニック経営者の皆様には、ぜひ一度、自院のレセプト請求体制を見直していただき、返戻や指導リスクに備えた体制づくりをご検討いただきたいと考えています。