2025.06.24
クリニック奮闘記
Vol.930 整形外科クリニックにおけるリハビリ算定誤りと個別指導
整形外科では、慢性疾患に対する運動器リハビリテーションを中心とした診療が多く、リハビリテーション関連の算定が診療報酬における大きな割合を占めています。本事例では、関東地方にある整形外科クリニックが、リハビリテーション算定の不備や施設基準違反を理由に厚生局から個別指導を受けたケースを紹介します。
背景と経緯
当クリニックは、運動器疾患に特化したリハビリテーションを提供する都市型整形外科で、1日あたりの患者数は150人を超えていました。外来リハビリテーションに加え、骨粗鬆症や脊柱管狭窄症などの慢性疾患に対して慢性期管理料を含む診療報酬を算定していましたが、月間レセプトの返戻件数が増加していたことから、関東信越厚生局より個別指導の通知を受けました。
指摘された主な内容
1. リハビリ開始初日の診察未実施
リハビリ開始にあたり、原則として医師の診察が必要ですが、開始日に医師による診察が実施されておらず、指示書のみでリハが行われていたケースが複数確認されました。これにより、初回リハ算定の要件を満たしていないとされました。
2. リハビリテーション実施計画書の記載不備
慢性疾患リハビリ管理料を算定していたにもかかわらず、計画書に以下の不備が見られました:
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医師の署名・押印の欠如
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目標設定が抽象的(例:「機能改善を図る」など)
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患者への説明および同意取得記録の未記載
これにより、診療報酬算定の正当性に疑義があると判断されました。
3. リハビリ実施者と実績の記録不一致
リハビリテーション実施記録には、理学療法士が施行したとされる日時と、実際の勤務記録に食い違いがあり、カルテ記録と現場実態の乖離が指摘されました。これは「記載なき請求」「事実なき請求」と判断されるリスクをはらみます。
クリニックでの改善内容
1. 電子カルテとリハ管理システムの連携強化
リハビリ実施記録と勤務シフトを連動させ、記録の正確性を高める仕組みを整備しました。また、医師によるリハ指示と患者評価をテンプレート化し、初回診察の記録漏れを防止する運用フローを導入しました。
2. レセプト外注による点検強化
弊社(株式会社メディカルタクト)と連携し、「レセプト請求代行」サービスを導入。特にリハビリ関連の請求項目について、医師の指示記録と計画書・実施記録の整合性をチェックするダブル点検体制を構築しました。これにより返戻や査定のリスクが大幅に低減されました。
3. リハビリスタッフ研修の徹底
理学療法士や作業療法士に対し、診療報酬制度や記録方法に関する研修を年2回実施する体制としました。単なる技術職としてではなく、保険制度を理解した専門職としての意識改革を促進しています。
成果と展望
改善後、厚生局からは「施設基準と実態の整合性が確認できた」との評価を受け、再指導の対象から外れました。返戻件数は月間50件から5件程度へと大幅に減少し、リハビリ関連の請求に対する内部チェック体制も確立されました。
今後は、診療報酬改定ごとに実施項目と請求ルールの見直しを行い、継続的にレセプト精度の向上を図る方針です。
まとめ
整形外科やリハビリテーションを提供するクリニックにとって、「リハビリの質」だけでなく「レセプトの質」も問われる時代です。不適切な請求が新規指導の対象となる今、記録と算定の整合性を第三者目線で確認することが極めて重要です。
個別指導を未然に防ぐ体制づくりの一環として、ぜひ外部チェックの導入をご検討ください。