Vol.932 美容皮膚科クリニックにおける保険診療と自由診療の混在による個別指導

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クリニック奮闘記

2025.06.24

クリニック奮闘記

Vol.932 美容皮膚科クリニックにおける保険診療と自由診療の混在による個別指導

美容皮膚科クリニックでは、シミ・シワ・脱毛などの自由診療と、ニキビや湿疹など保険診療が混在するケースが多く見られます。その中で、自由診療に比重を置きすぎるあまり、保険診療における診療録の記載不備やレセプト請求の誤りが発生し、厚生局から「保険と自費の線引き不明確」「管理料の不適切算定」等を理由に個別指導の対象となった事例を紹介します。

背景と経緯

本件のクリニックは開業5年目の都市型美容皮膚科で、SNSやWeb広告を活用して集患を行い、月間の延べ患者数は約1,000人にのぼっていました。全体の約7割が自由診療で、残り3割が保険診療患者という構成でした。

しかし、自由診療に注力するあまり、保険診療のレセプト請求に関する管理が曖昧となり、下記の問題が重なった結果、個別指導の通知を受けることになりました。

指摘された主な内容

1. 自費診療と保険診療の混在による請求誤り

1人の患者に対して、同日に保険診療と自費診療の施術を同時に行い、区別なく記載・請求されていた事例が複数確認されました。特に、同日に行ったピーリングやレーザー治療などが保険請求に含まれていた例があり、厚生局から「混合診療の疑い」と判断されました。

2. 管理料の算定要件の不備

慢性疾患管理料や特定疾患療養管理料を算定していたものの、診療録上に病状の評価、療養計画、生活指導などの記載がなく、形式的な記録にとどまっていました。さらに、医師の診察が不十分で、スタッフによる処置のみによる日も確認されました。

3. 自由診療に偏った診療体制

自由診療に偏重する診療スケジュールにより、保険診療の患者に対する診察時間が極端に短く、内容の記録も簡素であった点が指摘されました。特に初診患者において、疾患の詳細な評価や他院紹介の検討等がなされておらず、「保険診療としての実態が不十分」との評価を受けました。

改善策

1. 保険・自費の明確な区分管理の徹底

同一日・同一患者に対する保険診療と自費診療について、受付段階での明確な区分管理体制を構築。施術前に保険診療の範囲を患者に説明し、文書での同意取得を行うように変更しました。電子カルテ上も別シートで記録を分け、レセプト請求の整合性を強化しました。

2. 管理料・加算の適正な運用フロー構築

「レセプト外注」を活用し、株式会社メディカルタクトと連携の上で、毎月の管理料の妥当性を点検。SOAP形式のテンプレートを医師に提供し、症状・指導・検査結果・療養計画の記録を標準化。医師の診察が確実に行われているかをチェックリスト形式で確認しています。

3. 保険診療の質向上に向けたスタッフ教育

美容に特化したスタッフが多かったため、医療事務・看護師・医師に対して保険診療ルールとレセプト請求の基礎研修を実施。保険制度への理解を深め、混在リスクを回避する意識改革を図りました。

成果と展望

改善後、レセプト返戻件数は月平均15件から2件以下にまで減少し、レセプトの内容は大きく改善され記録精度が大きく向上し、スタッフ全体の業務意識にも良い変化が見られました。

現在は、自由診療と保険診療のバランスを見直し、保険診療の継続的な品質向上に取り組むとともに、毎月のレセプトチェックを継続しています。

まとめ

美容皮膚科においては、保険診療と自由診療が混在すること自体は合法ですが、それぞれの適切な区分管理と記録体制、そして診療報酬制度の理解が不可欠です。