2025.07.14
クリニック奮闘記
Vol.943 医療事務スタッフにレセプトを教育することの問題点とその背景
■はじめに クリニック経営において、医療事務スタッフのレセプト業務スキルは重要な柱です。診療報酬の適切な請求と管理が収益の安定に直結するため、スタッフの力量に差があると、経営全体への悪影響が顕著に現れます。本記事では、医療事務スタッフにレセプト業務を教育する際に直面する課題と、その背景を整理します。
■レセプト教育における代表的な問題点
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属人化された業務体系 多くのクリニックでは、レセプト業務が特定のベテランスタッフに依存しており、そのノウハウが形式知化されていません。この属人化により、新人教育が行き届かず、スタッフ間でのスキルの差が拡大します。
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教育時間の不足 日々の業務に追われる中、教育に充てる時間を確保するのは困難です。診療後の時間帯や限られた昼休みに教育を実施するケースもありますが、集中力や継続性に課題が残ります。
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教育内容の不統一 院内で教育資料が整備されておらず、担当者ごとの教え方にバラつきがある場合、受講者の理解にムラが生じます。統一された教育プログラムの不在が、教育効果を減少させています。
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スタッフ側のモチベーションの低さ レセプト業務に苦手意識を持つスタッフは多く、特に中高年層は新しい知識やシステムへの抵抗感を抱きがちです。この心理的な障壁が学習の妨げとなります。
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院長の関心不足 レセプト業務は経営に密接に関わるにもかかわらず、診療優先の姿勢から院長がスタッフ教育に関与しないケースも散見されます。この状況では、スタッフの成長が自己責任に委ねられ、教育体制が形骸化しやすくなります。
■制度変更とレセプト教育の負担増 診療報酬改定のたびにレセプトのルールは変化します。ルールの理解には時間を要し、未対応のまま請求ミスが発生すると、返戻・減点のリスクが高まります。つまり、継続的なアップデート教育が不可欠です。
■ITシステムの進化とスタッフの乖離 電子カルテやレセプトコンピュータの進化により、事務作業の効率は上がっているものの、システムの使いこなしには知識が必要です。新しいシステムが導入されても、現場スタッフが活用しきれずに「宝の持ち腐れ」となる例もあります。
■問題点を乗り越えるには
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教育内容の標準化とプログラム化(次回以降で詳述)
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院内マニュアルの整備と動画教材の導入
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月1回の定期勉強会による知識の定着
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教育担当者の配置と評価制度の連動
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院長自身が教育の旗振り役となる体制づくり
■まとめ レセプト業務の教育には多くの障壁がありますが、それを乗り越えることが経営安定への第一歩です。属人化の排除、継続的な教育体制の構築、モチベーションの向上、そして院長の関与が不可欠です。