2025.07.28
クリニック奮闘記
Vol.953 歯科医院の倒産増加から学ぶクリニックの経営戦略
近年、帝国データバンクの調査によると、歯科医院の倒産件数が過去最多レベルで増加しています。これは単なる偶発的な現象ではなく、業界全体の構造的な問題が表面化したものといえます。歯科業界はコンビニエンスストアの開業件数を上回る飽和状態にあり、患者数の頭打ち、競争の激化、そして収益性の低下が背景にあります。
興味深いことに、歯科医院のこの状況は、一般医科診療所の「10年先の姿」とも言われています。つまり、今の歯科医院が直面している課題は、遅かれ早かれ医科クリニックにも訪れる可能性が高いのです。そこで本記事では、歯科医院の倒産増加の背景を分析し、それを踏まえて一般医科クリニックが取り組むべき経営戦略を考察します。
歯科医院倒産増加の背景
1. 過剰開業と市場飽和
歯科医院は全国に多数存在し、近年はその数がコンビニエンスストアの開業数を上回ると言われています。これは、歯科医師の増加とともに新規開業が相次いだ結果、地域ごとの患者数に対して過剰な供給状態となったためです。患者一人当たりの受診回数や治療単価の伸び悩みも相まって、経営環境は厳しくなっています。
2. 患者ニーズの多様化と競争の激化
また、患者のニーズは多様化し、インターネットによる情報収集が一般化したことで、消費者は料金やサービス内容を比較して選択するようになりました。結果として、質の高いサービスや独自の診療メニューを持つ医院に患者が集中し、そうでない医院は競争に敗れやすい状況です。
3. 経営の専門性不足
さらに、医師は医療技術に長けていますが、経営の専門性が不足しているケースが多いことも課題です。経営改善策を講じることができず、集患対策の遅れ、キャッシュフローの悪化や資金繰りの困難に直面している医院が増えています。
歯科医院の成功事例に学ぶ経営戦略
ここで一つの成功事例をご紹介します。
事例:地域の歯科医院のM&Aによる経営再生
関東地方にある歯科医院Aは、過剰開業地域に位置し、患者数の減少と競争激化により経営が悪化していました。そこで、同地域の大手医療法人BがM&Aを提案し、歯科医院Aは法人の傘下に入りました。経営資源を共有し、スタッフの教育体制や診療メニューの充実を図った結果、患者満足度が向上し、経営の安定化に成功しました。
この事例からは、単独での経営に固執せず、戦略的に規模を拡大・法人化することがリスク回避に有効であることがわかります。
一般医科クリニックが取り組むべき経営課題
歯科医院の状況を踏まえ、一般医科クリニックが今後直面する可能性のある課題とその対応策を挙げます。
1. 市場の飽和と差別化戦略
クリニック数の増加に伴い、患者数は頭打ちになるため、診療科目やサービスの差別化が必須となります。専門性の高い診療、患者ニーズに合わせた自由診療の導入、地域に根差した医療提供などが鍵です。
2. 経営の効率化
人件費や設備費などの固定費が増加する中、効率的な経営が求められます。ITシステムの活用による事務効率化、スタッフの多能工化、業務フローの見直しが重要です。
3. 人材確保と育成
優秀なスタッフの確保と定着は、医療の質と経営の安定に直結します。働きやすい環境整備やキャリアパスの提示が必要です。
4. 規模の拡大と法人化
M&Aや医療法人化による規模拡大は、経営リスクの分散や資源の効率的活用につながります。複数クリニックの連携によるシェアリングエコノミーの活用も有効です。
歯科医院の倒産増加は、医科クリニックにとって他人事ではありません。早めに経営の課題を見極め、効果的な戦略を講じることが将来のリスク回避につながります。
今後の厳しい経営環境を乗り越えるために、規模の拡大や経営効率化、人材戦略の強化など、さまざまな視点で自院の経営を見直しましょう。