Vol.960 個別指導当日、冷静な対応が未来を拓く〜指導官との円滑なコミュニケーション術〜

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クリニック奮闘記

2025.08.04

クリニック奮闘記

Vol.960 個別指導当日、冷静な対応が未来を拓く〜指導官との円滑なコミュニケーション術〜

指導当日、院長先生の「真価」が問われる時

個別指導の通知が届き、入念な事前準備を経て、いよいよ個別指導当日を迎える。この日、院長先生の心境は、不安と緊張、そして「何とか乗り切りたい」という強い思いが入り混じっていることでしょう。しかし、この個別指導の場こそ、院長先生のクリニックに対する「真摯な姿勢」と「プロフェッショナルとしての対応」が問われる時です。

前回のブログでは、個別指導に向けた徹底した事前準備の重要性を解説しました。本ブログでは、個別指導当日、指導官との円滑なコミュニケーションを図り、冷静かつ的確な対応を行うための具体的なノウハウを深掘りします。ここで紹介するポイントを押さえることで、院長先生はより自信を持って指導に臨み、指導を建設的な「対話」の場へと導くことができるはずです。

個別指導当日の心構え:焦らず、冷静に、誠実に

個別指導は、指導官が一方的に指摘をする場ではありません。むしろ、クリニックの診療実態を行政側が理解し、疑問を解消するための「質疑応答」の場です。この認識を持つことが、指導当日を乗り切る上で最も重要な心構えとなります。

1. 焦らない:時間的制約を意識しつつも、落ち着いて

指導には時間的な制約がありますが、焦りは禁物です。指導官の質問に対しては、一度落ち着いて考え、的確な回答を心がけましょう。不明な点や確認が必要な場合は、正直にその旨を伝え、確認の時間をもらうことも可能です。

2. 冷静に:感情的にならず、客観的な視点を保つ

指摘を受ける中で、時に感情的になりそうになる瞬間もあるかもしれません。しかし、感情的な反応は、建設的な対話を妨げます。あくまで客観的な事実に基づき、冷静に対応することを心がけましょう。指摘内容が不当だと感じる場合でも、まずは冷静に相手の意見を聞き、その上で自らの意見を論理的に説明することが重要です。

3. 誠実に:事実を伝え、不備があれば認める勇気

最も重要なのは「誠実さ」です。事実に基づかない虚偽の報告や隠蔽は、かえって事態を悪化させる原因となります。もし、請求上の不備や記載漏れなど、自身のクリニック側に過失があった場合は、正直にその事実を認め、今後の改善策を提示する姿勢が求められます。誠実な対応は、指導官の信頼を得る上で不可欠です。

指導官との効果的なコミュニケーション術

個別指導におけるコミュニケーションは、単なる情報のやり取りを超え、相互理解を深めるプロセスです。

1. 指導官の質問を正確に理解する

質問の意図を正確に理解することが、的確な回答の第一歩です。もし質問の内容が曖昧だと感じたら、遠慮せずに「具体的にどのような点についてお尋ねでしょうか?」などと確認しましょう。

2. 論理的かつ簡潔に回答する

質問に対しては、結論から述べ、その後に具体的な根拠や説明を続けると、相手に伝わりやすくなります。長々と説明したり、論点が不明瞭な回答は避けましょう。

3. カルテや資料を提示しながら説明する

口頭での説明だけでなく、準備しておいたカルテや検査結果、関連する資料などを具体的に提示しながら説明することで、説得力が増します。例えば、「この患者様のこの症状に対して、この検査が必要であると判断したのは、カルテのこの記載の通り、〇〇という所見があったためです」といった形で説明すると、指導官も納得しやすくなります。

4. 医学的根拠と診療上の判断を明確に伝える

なぜその診療行為を選択したのか、なぜその薬を処方したのかなど、医学的根拠に基づいた院長先生の診療上の判断を明確に伝えましょう。患者さんの病態や状態に応じた個別性の高い診療を行っている場合は、その特殊性を丁寧に説明することが重要です。

5. 具体的な事例を挙げて説明する

抽象的な説明よりも、具体的な患者事例を挙げて説明する方が、指導官に理解してもらいやすくなります。ただし、個人情報に配慮し、匿名化するなどの措置は忘れてはいけません。

6. 指摘事項に対する反論は、丁寧かつ建設的に

もし、指導官の指摘が事実と異なる、あるいは解釈が違うと感じる場合は、感情的にならず、論理的に反論しましょう。その際も、「私どもの解釈では〇〇と理解しておりましたが、御庁のご見解は〇〇なのですね。しかしながら、当院では、この患者様の場合、〇〇という理由から、この診療が必要であると判断いたしました」といったように、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

7. 記録を取る:指摘事項と改善策をメモする

指導中に指摘された事項や、その改善策、指導官からのアドバイスなどは、必ずメモを取りましょう。後で振り返る際に役立つだけでなく、改善計画を立てる上でも不可欠です。

指導官の「役割」を理解する

指導官も、自身の「役割」を全うするために質問をしています。彼らは、保険診療の適正化という目的のために、客観的なデータに基づいて疑問を呈しているに過ぎません。個人的な感情や悪意があるわけではない、ということを理解することは、院長先生自身の精神的な負担を軽減し、冷静な対応を促します。

彼らは、複雑な診療実態を行政のルールに照らし合わせる中で、理解しにくい点があるかもしれません。その「理解を助ける」のが、院長先生の役割でもあるのです。

個別指導の「結果」を受け止め、未来へ繋げる

個別指導の結果、改善を要する点が指摘されたり、返還金が発生したりする可能性もあります。どのような結果になったとしても、それを真摯に受け止め、今後のクリニック運営に活かすことが重要です。

指摘された点については、速やかに改善計画を立て、実行に移しましょう。これにより、将来的な同様の指摘を避け、クリニックの医療の質と経営の安定性を高めることができます。

まとめ:個別指導は「成長」の機会

個別指導は、確かに精神的な負担が大きいかもしれません。しかし、適切な準備と冷静な対応、そして誠実な姿勢で臨むことで、これをクリニックの「成長」のための貴重な機会とすることができます。

指導官との建設的な対話を通じて、自身のクリニックの診療内容を見つめ直し、保険診療の適正化を推進することは、患者さんへのより良い医療提供にも繋がります。次回のブログでは、個別指導後に取り組むべき具体的な改善策と、今後のクリニック運営における保険診療の適正化に向けた継続的な取り組みについて詳述します。