Vol.987 赤字病院への公的支援は必要か?国と地方の支援策と経営への影響

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クリニック奮闘記

2025.09.08

クリニック奮闘記

Vol.987 赤字病院への公的支援は必要か?国と地方の支援策と経営への影響

全国の病院の6割から7割が赤字経営に陥る中、病院経営者にとって「公的支援を受けるか否か」は非常に重要なテーマです。国や地方自治体による補助金や交付金などの支援策はありますが、一方で「市場原理に任せるべきだ」という意見も根強く存在します。本記事では、公的支援の現状とそのメリット・デメリットを整理し、病院経営に与える影響を考察します。


1. 国および地方の主な支援策

赤字病院に対して、国や地方自治体は以下のような支援策を提供しています。

(1) 国の支援策

  • 医療機関経営改善支援事業
    赤字病院に対して、経営改善計画の策定や財務診断支援を行う国の事業です。

  • 診療報酬加算や特例措置
    特定の地域や診療科で患者確保が困難な場合、診療報酬に上乗せされる加算制度があります。

  • 災害・感染症対応補助金
    感染症や自然災害への対応で発生した臨時コストを補填する制度です。

(2) 地方自治体の支援策

  • 運営交付金・施設整備補助
    地方病院の設備改修や新規機器導入に対する補助金。

  • 地域医療維持のための特別交付金
    地域における医療提供体制の維持を目的とした、赤字病院への補助金です。

  • 人材確保支援
    医師や看護師の招聘費用や住宅手当など、地方病院の人材不足を補う支援。

これらの支援策は、赤字病院が短期的に収益を補填する上で有効です。


2. 公的支援のメリット

(1) 赤字の即時補填

補助金や交付金を受けることで、赤字の拡大を防ぎ、病院の存続を支えることができます。特に地方病院では、地域住民の医療アクセス維持に直結します。

(2) 経営改善の時間を確保

支援金によってキャッシュフローの余裕が生まれれば、経営改善策を計画的に実施できます。例えば、レセプト請求精度の向上や業務効率化、ICT導入といった改善策を着実に進めることが可能です。

(3) 地域医療の安定化

補助を受ける病院が存続すれば、地域全体の医療提供体制が維持されます。医師不足や救急体制の破綻を防ぎ、地域住民の健康を守る効果もあります。


3. 公的支援のデメリット

(1) 自助努力の意識低下

支援に頼りすぎると、病院側の経営努力が後回しになり、長期的に自立できない可能性があります。

(2) 市場原理との乖離

赤字病院を存続させることで、効率の悪い医療機関が生き残り、市場全体の競争力低下につながる懸念があります。

(3) 財源制約

国や自治体の財源は無限ではありません。過剰な支援は他の医療政策や社会保障に影響を与えるリスクがあります。


4. 支援すべきか、市場に任せるべきか

赤字病院に対する公的支援については、二つの立場があります。

(1) 支援すべき立場

  • 医療は公共財であり、赤字でも地域に必要な病院は存続させるべき

  • 補助金や交付金は地域医療の安全網として不可欠

  • 短期的な支援で改善策を実施する時間を確保できる

(2) 市場に任せる立場

  • 非効率な病院は淘汰されるべきで、補助で延命させるべきではない

  • 競争原理を働かせることで、医療全体の効率と質が向上

  • 自助努力が病院経営に根付かないと、持続可能な経営は困難


5. 実務的な視点でのバランス

現実の病院経営においては、公的支援と自助努力の両立が求められます。

  • 支援金で赤字を補填しつつ、レセプト請求の精度向上や業務効率化で収益改善

  • 経費見直しや診療体制再編を行い、支援に頼らず持続可能な経営を目指す

  • 地域特性に応じた施策で、都市部は競争優位性の強化、地方は人材確保・患者流出防止

こうした視点により、単なる赤字補填ではなく「公的支援を活用しながら持続可能な病院経営」を実現できます。


まとめ

赤字病院への公的支援は、短期的な存続や地域医療維持には不可欠ですが、長期的には自助努力による改善が不可欠です。

  • 都市部は競争力強化とコスト効率化

  • 地方は患者確保と人材確保

  • 全体としてレセプト請求精度向上など収益改善策の徹底

このバランスを取ることで、支援を有効活用しながら持続可能な病院経営を実現できます。