Vol.988 赤字病院を立て直すには?複合的な経営課題への総合アプローチ

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クリニック奮闘記

2025.09.08

クリニック奮闘記

Vol.988 赤字病院を立て直すには?複合的な経営課題への総合アプローチ

全国の病院の6割から7割が赤字経営に陥る中、病院経営者にとって「どこから手をつけるべきか」という悩みは深刻です。赤字の原因は単一ではなく、患者数の減少、固定費や人件費の重さ、診療報酬の抑制、受診抑制、地域医療環境の変化など、多岐にわたります。こうした課題は互いに影響し合っており、どれか一つだけを改善しても十分な効果は得られません。

そこで重要なのは、複合的な課題に並行して取り組む視点です。本記事では、赤字病院が直面する課題と、並行して行うべき改善策をわかりやすく整理して解説します。


レセプト請求精度の向上は即効性のある施策

レセプト請求の精度を高めることは、短期的な収益改善につながる代表的な施策です。医師や看護師の診療内容に基づいた適正な算定や、部門間の情報共有の徹底により、請求漏れや重複請求を防ぐことができます。

月次での収益チェックや点検ルーチンを整備することで、年間で数千万円単位の収益回復が可能なケースも少なくありません。しかし、ここで注意したいのは、レセプト精度の向上だけに頼ってはいけないということです。赤字化の根本原因は、経費の無駄や診療体制の非効率、地域特性による患者数の変動など複数あるためです。


経費の合理的見直し

経費削減は古典的な手法ですが、無計画な削減は医療の質や業界全体の持続可能性を損なうリスクがあります。

たとえば、薬品や診療材料の仕入単価の交渉は病院単体ではメリットがありますが、過度な値引き要求は卸業者や業界全体の競争力低下を招く可能性があります。そのため、削減効果の高い消耗品や外注コストの見直し、光熱費の効率化など、医療の質を維持しつつ無駄を削減できる施策を優先することが望ましいでしょう。


診療体制と地域連携の最適化

病院経営の改善には、診療体制の見直しや地域医療との連携も不可欠です。

都市部では競争が激しいため、利益率の低い診療科を整理し、専門性を強化することで患者の選択理由を明確にできます。地方では、患者の減少や医師不足に対応するため、診療所や介護施設との連携を強化し、患者流出を防ぐことが重要です。

たとえば、高度医療は大病院に集中させ、軽症患者や慢性疾患のフォローは地域医療で対応する仕組みを作ると、患者満足度を維持しながら収益効率も向上します。


長期的な視点での経営戦略

短期的な改善だけでは、赤字脱却は困難です。長期的な視点で戦略を立てることが求められます。

人材戦略では、医師や看護師の採用・育成・定着を進めると同時に、ICTの活用で業務負担を軽減します。収益面では、健診や予防医療、在宅医療、オンライン診療など多角的な事業展開で新しい収益源を確保することが必要です。財務面では、収益改善策と経費見直しを組み合わせつつ、必要に応じて公的支援を活用することで、持続可能な経営基盤を構築できます。


まとめ

赤字病院の改善には、単一の施策だけではなく、複合的な課題に並列的に取り組むことが不可欠です。

  • レセプト請求精度の向上による短期的収益改善

  • 経費見直しによるコスト効率化

  • 診療体制や地域連携の最適化

  • 中長期戦略の策定による持続可能な経営基盤

これらの施策を統合的に行うことで、赤字脱却だけでなく、地域に必要とされる病院としての価値を維持することが可能です。