2025.10.20
クリニック奮闘記
vol.1016 返戻・減点事例から学ぶM&Aリスク回避
クリニックのM&Aでは、財務諸表を中心としたデューデリジェンス(DD)が一般的ですが、実は多くのディールでレセプト請求の精査が行われないことが現状です。しかし、返戻や減点といったレセプト関連の問題は、M&A後の収益やキャッシュフローに大きな影響を与えかねません。
本記事では、返戻・減点事例を通じて、レセプトデューデリジェンスの重要性とM&Aリスク回避の方法について解説します。
返戻・減点とは何か?
まず、返戻と減点について整理します。
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返戻:保険請求が保険者によって承認されず、再請求が必要となるケース。
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減点:請求内容に不備がある場合に、支払額が減額されること。
例えば、診療行為の記録漏れ、算定ミス、診療報酬の条件不適合などが原因で発生します。これらは、財務諸表上の売上には一時的に計上されている場合も多く、潜在的な損失が見えにくいのが特徴です。
ケーススタディ:返戻・減点がもたらす影響
ある皮膚科クリニックのM&A事例では、年間売上1億円とされていましたが、レセプト精査を行ったところ返戻率が約10%に達していることが判明しました。減点や返戻への対応コストも含めると、実質的なキャッシュフローは大幅に減少することが分かりました。
さらに、請求の一部に継続的な算定ミスがあり、M&A後の収益安定化のためには業務改善が不可欠でした。財務データだけを信頼していた場合、買い手は想定外の損失を被る可能性がありました。
返戻・減点事例から学ぶリスク
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返戻の頻発によるキャッシュフロー圧迫
返戻処理には再請求や問い合わせ対応が必要であり、事務スタッフの負担も増加します。M&A後に返戻が多発すると、運営コストが膨らみ、利益率が低下します。 -
減点による収益減少
診療報酬の減点は、帳簿上の売上と実際の入金額の差額を生みます。減点の原因が解消されていなければ、長期的な収益に悪影響を及ぼします。 -
契約条件への影響
返戻・減点リスクを事前に把握していなければ、M&A契約時の価格設定や条件交渉において不利になります。リスクを数値化することで、買い手と売り手双方が納得できる条件設定が可能です。
レセプトデューデリジェンスの進め方
返戻・減点リスクを回避するためには、M&A前のレセプト精査が不可欠です。具体的には以下のプロセスが有効です。
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過去3年分のレセプト分析
長期的な返戻・減点の傾向を確認することで、問題の恒常性を把握します。 -
返戻理由の分類
算定ミス、記録漏れ、診療報酬改定対応不足など、原因を分類することで改善策を明確化。 -
潜在損失の数値化
返戻・減点の総額を算出し、M&A価格や条件交渉に反映します。 -
改善施策の提案
診療記録の精査、スタッフ教育、請求プロセスの標準化など、リスク低減の具体策を提示。
当社メディカルタクトの支援事例
当社では、クリニックのレセプト請求代行サービスを通じて、M&A前の返戻・減点リスク評価を行っています。
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返戻・減点率の分析
過去のレセプトを精査し、返戻・減点の頻度や原因を明確化。 -
潜在損失の提示
財務諸表だけでは見えない潜在的損失を算出し、買い手にリスク情報を提供。 -
改善策の提案
診療報酬改定対応、算定ミス防止策、スタッフ教育プランなどを提示。
これにより、買い手は安心して投資判断を行うことができ、売り手も信頼性の高い請求情報を提示することで、交渉力を強化できます。
まとめ
クリニックM&Aにおいて、返戻・減点リスクを軽視することは、M&A後の収益に直結する大きな落とし穴です。財務データだけで判断するのではなく、レセプト精査によるリスク評価を行うことで、M&A契約の透明性を高め、投資の失敗を防ぐことが可能です。
当社メディカルタクトは、レセプト請求代行と精査を組み合わせ、M&Aの成功と安定経営をサポートします。返戻・減点のリスクを把握し、適切な契約条件と改善施策を提示することで、クリニックM&Aを安全かつ効率的に進めることができます。
