vol.1019 診療報酬改定年を迎えるクリニック経営戦略

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クリニック奮闘記

2025.10.28

クリニック奮闘記

vol.1019 診療報酬改定年を迎えるクリニック経営戦略

外来機能分化と在宅医療シフトをどう捉えるか

はじめに:診療報酬改定がクリニック経営に与える影響

2025年度は診療報酬の改定年です。
現在、中医協(中央社会保険医療協議会)では「外来機能分化」「在宅医療の充実」「医療DXの推進」といった、クリニック経営に直結するテーマが審議されています。

少子高齢化が進み、外来患者数が頭打ちとなる中で、クリニックには"自院の役割を再定義する経営戦略"が求められています。
とくに内科クリニックや整形外科クリニックは、患者構成・地域需要の変化に最も影響を受けやすい分野であり、今後の方向性を見極めることが重要です。

本稿では、中医協での議論内容を踏まえ、次期改定を見据えたクリニック経営の進むべき道を整理します。


1.中医協で議論されている主要テーマ

2025年度改定に向けて、中医協で注目されている主な論点は次の3つです。

  1. 外来機能の分化と地域連携の強化
    大病院への患者集中を避け、クリニックが地域で"かかりつけ医"として機能する仕組みを整えること。
    「かかりつけ医機能報告制度」が導入され、医療機関の機能分類が報酬面にも影響を及ぼすと見られています。

  2. 医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
    電子カルテ情報の共有、オンライン資格確認、電子処方箋などを通じた情報連携体制の強化。
    改定ではDX対応が加算評価される一方、未対応の場合には減点リスクも想定されます。

  3. 在宅医療・地域包括ケアの充実
    高齢患者の増加により、在宅医療への移行を支援する報酬が拡充される見込みです。
    訪問看護や薬局、介護事業所との連携体制も評価対象に加わる方向です。

これらはすべて、「外来依存型」から「地域包括・在宅連携型」への転換を促す動きといえます。


2.外来機能分化が意味する"地域における立ち位置"の再定義

外来機能分化とは、医療資源の集中を防ぎ、適正な医療提供体制をつくるための制度的整理です。
今後、すべてのクリニックに求められるのは、「自院がどの層の患者に、どのような価値を提供するのか」を明確にすることです。

内科クリニックのケース

一般内科の外来患者は、生活習慣病や軽症感冒、慢性疾患のフォローが中心です。
しかし、こうした外来需要は今後、オンライン診療や薬局併設クリニックなどに一部代替される可能性があります。
一方で、高齢者の慢性疾患管理や在宅移行支援といった分野は今後も成長が見込まれます。

つまり、内科クリニックは「生活習慣病+在宅支援」「外来+訪問栄養指導」など、
外来と在宅をシームレスに結ぶハイブリッドモデルへと発展させることが鍵となります。

整形外科クリニックのケース

整形外科はリハビリ需要が高く、地域リハ・運動器ケアの中核を担います。
しかし近年は慢性疼痛・加齢性疾患の患者が増え、外来単体では生産性が下がりやすい構造にあります。
そのため、通所リハや訪問リハとの連携を強化し、
「外来リハ+在宅リハ+予防プログラム」として多層的に展開する戦略が求められます。


3.在宅医療シフトは"成長と安定"の両立戦略

中医協では、在宅医療の拡充を「次期改定の重点項目」として位置づけています。
とくに内科・整形外科の在宅支援は、報酬上の重点領域となる可能性が高いといえます。

内科の在宅医療

内科医は、慢性疾患・終末期ケア・多疾患併存患者への対応力が高く、
在宅医療への展開が比較的スムーズです。
在宅療養支援診療所(機能強化型)への移行を視野に入れ、訪問看護・薬局・リハビリとの連携を整備することで、
外来減少期にも安定した経営基盤を確保できます。

整形外科の在宅・リハ領域

整形外科では、退院後リハや骨折後のフォローアップなど、
在宅・通所リハとの連携が拡大しています。
患者のQOL向上を評価する方向で報酬体系が改定されれば、
機能回復支援型クリニックとして地域包括ケアに参加することが重要です。

いずれの診療科も、在宅を単なる延長線上ではなく、
「外来との統合モデル」として設計することが成長の鍵になります。


4.医療DXとタスクシフトがもたらす経営効率化

診療報酬改定では、医療DX(デジタル化)対応の有無が明確に差を生む見込みです。
オンライン資格確認や電子処方箋、電子カルテ情報の共有は、今後の報酬要件となる可能性があります。

DX対応の目的は、単なるIT導入ではなく、人的リソースの再配置=タスクシフトにあります。

たとえば内科・整形外科では、

  • 看護師が行っていたバイタル入力や問診をシステム化

  • 医師のカルテ記載を音声入力AIで支援

  • 事務職によるレセプト点検を自動化

といった取り組みによって、診療の生産性が大幅に改善します。
また、データ分析による「患者属性別の経営指標管理」も可能になり、
改定後の収益変動への迅速な対応が可能になります。


5.クリニックが取るべき3つの戦略軸

  1. 機能の明確化と地域ポジショニングの確立

    • 内科は「慢性疾患管理+在宅支援」、整形外科は「外来リハ+在宅リハ」へ。

    • 地域の医療・介護資源との連携を強化し、自院の専門性を明確化する。

  2. 業務効率化と医療DXの実装

    • 加算取得だけでなく、スタッフの負担軽減と生産性向上を目的とする。

    • タスクシフトを進め、医師・看護師・事務の業務を再構築する。

  3. 外来+在宅のハイブリッド経営モデル

    • 外来収益に依存せず、在宅やリハを組み合わせて安定収益を確保。

    • チーム医療体制を整備し、患者の"生活全体"を支える体制へ転換する。


おわりに:改定年を"変革の年"に

診療報酬改定は、単なる点数の増減ではなく、クリニック経営モデルを再構築する契機です。
内科・整形外科いずれの領域でも、
「外来の質」と「在宅・地域連携の深度」が経営の持続性を左右します。

医療DXによる業務効率化、タスクシフトによるチーム強化、そして在宅支援への展開。
この3点を柱に据えたクリニック経営こそ、改定後の時代に適応し、地域医療で選ばれ続ける戦略といえるでしょう。