vol.1021 人件費・固定費増加時代におけるクリニック収益構造改革 ―内科・整形外科クリニックの戦略的対応―

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クリニック奮闘記

2025.10.28

クリニック奮闘記

vol.1021 人件費・固定費増加時代におけるクリニック収益構造改革 ―内科・整形外科クリニックの戦略的対応―

はじめに:固定費増加がクリニック経営に与える影響

近年、医療業界では人件費や設備費、薬剤費など固定費が増加しています。
特に内科・整形外科クリニックでは、慢性疾患管理やリハビリサービスの拡大に伴い、看護師・リハスタッフ・医療事務スタッフの人件費が経営に占める割合が高まっています。

加えて2025年度診療報酬改定では、外来医療の機能分化や在宅医療へのシフトが加速することから、収益構造の見直しが避けられない状況です。
本稿では、クリニックが固定費増加時代にどのように収益構造を改革すべきかを整理します。


1.人件費・固定費の増加と収益への影響

クリニック経営における固定費の主要項目は以下の通りです。

  1. 人件費
    医師、看護師、リハビリスタッフ、事務スタッフなど、スタッフの賃金や福利厚生費。
    高齢化社会では、経験豊富なスタッフの維持が必要であり、賃金上昇圧力が強まっています。

  2. 設備費・施設維持費
    診察室やリハ設備、ICT導入・電子カルテシステムなどの維持費。
    DX導入やオンライン診療環境整備には初期投資も必要です。

  3. その他固定費
    光熱費、通信費、消耗品費など。特にリハビリ設備や治療機器の増加に伴い、コストは増加傾向です。

内科クリニックでは、慢性疾患患者へのフォローアップや訪問診療体制の整備が必要になり、人件費比率が従来より高くなる傾向があります。
整形外科クリニックでは、リハビリスタッフや物療スタッフの増員に伴い、固定費の増加が顕著です。

固定費の増加に対応せず外来中心の従来型経営を続けると、診療報酬改定による加算変動や外来患者数の伸び悩みにより、収益が圧迫されるリスクがあります。


2.診療報酬改定を踏まえた収益構造改革の方向性

診療報酬改定では、外来医療の機能分化や在宅医療の評価が強化されます。
これを踏まえ、クリニックが取るべき収益構造改革の方向性は以下の3つです。

(1) 外来+在宅医療のハイブリッドモデル

  • 内科クリニックの事例
    外来のみでは収益が安定しにくい慢性疾患管理や訪問診療を組み合わせる。
    在宅加算や多職種連携加算を活用し、外来減少に伴う収益低下を補う。

  • 整形外科クリニックの事例
    外来リハと訪問リハ、通所リハを組み合わせ、治療の継続性と収益の安定化を図る。
    特に骨折後リハや運動器疾患患者の在宅支援は、外来だけでは得られない報酬機会を生む。

(2) 業務効率化・DX導入によるコスト最適化

  • DXを活用した電子カルテ・予約システム・オンライン診療で、医師・看護師・事務スタッフの業務負担を軽減。

  • タスクシフトにより、スタッフの高度な業務と単純業務を分離。

  • 医療DXに対応することで、診療報酬の加算も獲得可能。

(3) 高付加価値サービスの戦略的導入

  • 健診、予防医療、栄養指導、運動器指導など、外来・在宅以外の収益源を開拓。

  • 整形外科では、個別リハプログラムやオンライン運動指導を提供することで、収益多角化を図る。


3.収益構造改革の実践ステップ

  1. 固定費・人件費の可視化とKPI設定

    • スタッフ構成ごとの人件費割合、外来・在宅の収益構造を明確化

    • 月次で収益・コスト・人件費比率を分析

  2. 業務フローとタスク分担の見直し

    • DX導入で削減できる作業を特定

    • 医師・看護師・事務の役割を最適化

    • 効率化によりスタッフが専門業務に集中できる環境を整備

  3. 外来・在宅・付加価値サービスの組み合わせ設計

    • 外来中心から外来+在宅+サービス型のハイブリッドモデルへ移行

    • 地域医療との連携を強化し、報酬加算の最大化を図る


4.ケーススタディ

内科クリニック

  • 月間外来患者数:1,200名

  • 在宅訪問患者:40名

  • 従来型収益モデル:外来収益依存型 → 人件費増加で利益率低下

  • 改革後モデル:外来+在宅+生活習慣病管理プログラム

    • 在宅加算・多職種連携加算を取得

    • 外来業務効率化で医師稼働を最適化

    • 結果:利益率15%改善、固定費増加の影響を吸収

整形外科クリニック

  • 外来リハ患者:200名/月

  • 訪問リハ患者:60名/月

  • 従来型収益モデル:外来+通所リハ依存 → 固定費増加で利益圧迫

  • 改革後モデル:外来+訪問リハ+オンライン運動指導

    • DX活用でスタッフ業務を効率化

    • 訪問リハ加算とオンライン指導加算で収益多角化

    • 結果:収益が外来減少期でも安定化、スタッフ負荷も軽減


5.経営者が押さえるべきポイント

  1. 収益構造を数字で把握
    固定費・人件費・外来収益・在宅加算・付加価値サービス収益のバランスを可視化すること。

  2. DX・業務効率化は戦略の一部
    単なるシステム導入ではなく、スタッフが効率的に働き、診療報酬加算を最大化できる仕組みとして設計する。

  3. 外来・在宅・サービスの最適組み合わせを設計
    収益源を複数持つことで、固定費増加時代でも安定経営を実現できる。


おわりに:固定費増加時代のクリニック経営

人件費・固定費が増加する中、従来型の外来依存型経営だけでは利益確保が難しくなっています。
診療報酬改定を契機に、収益構造をハイブリッド化する戦略が求められます。

内科・整形外科クリニックは、

  • 外来+在宅の両輪体制

  • DX・タスクシフトによる業務効率化

  • 高付加価値サービスによる収益多角化

を組み合わせることで、固定費増加時代における持続可能な経営モデルを構築できます。

改定年は、クリニックが収益構造を見直し、長期的に安定した経営基盤を築く絶好のタイミングです。