2025.10.28
クリニック奮闘記
vol.1022 地域包括ケア・在宅医療戦略
はじめに:高齢化社会におけるクリニックの役割
日本の高齢化率は30%を超え、地域医療のあり方が大きく変化しています。
従来、クリニックは外来中心の診療で収益を確保していましたが、今後は在宅医療や地域包括ケアとの連携が経営戦略の中心になります。
2025年度診療報酬改定でも、外来偏重型クリニックから、外来+在宅医療+多職種連携を評価する加算が強化される見込みです。
この流れを踏まえ、内科・整形外科クリニックがどのように地域包括ケアに対応すべきかを整理します。
1.地域包括ケアシステムとクリニックの位置付け
地域包括ケアは、医療・介護・生活支援を一体で提供する仕組みです。
クリニックはこの中で、次の2つの役割を担います。
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在宅医療の中心的提供者
高齢患者や慢性疾患患者への訪問診療・訪問リハを提供し、入院や施設利用の適正化に貢献。 -
地域連携のハブ
訪問看護、薬局、介護事業所、リハビリ施設などと情報を共有し、患者の生活全体を支える。
このため、クリニックは単に医療行為を提供するだけでなく、地域ネットワークの管理・調整能力も求められます。
2.内科クリニックにおける地域包括ケア戦略
外来+在宅ハイブリッドモデル
内科クリニックでは、生活習慣病や慢性疾患の患者が多く、外来だけでは十分なケアが難しい場合があります。
ここで重要なのが、外来+在宅医療の組み合わせです。
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外来診療で症状管理・検査・処方を行う
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在宅医療で高齢患者のフォロー、服薬管理、慢性疾患管理を継続
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多職種連携(訪問看護・薬剤師・ケアマネジャー)による支援体制を構築
このモデルにより、患者の生活の質を維持しつつ、在宅加算や多職種連携加算による収益確保が可能になります。
成功のポイント
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外来・在宅・訪問リハの患者フローを明確化
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DXを活用し、電子カルテで情報共有を効率化
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定期的な多職種カンファレンスで地域医療連携を強化
3.整形外科クリニックにおける地域包括ケア戦略
整形外科クリニックでは、骨折後のリハビリや運動器疾患の慢性管理が中心となります。
外来だけではなく、訪問リハ・通所リハ・オンライン運動指導などを組み合わせることで、地域包括ケアへの貢献と収益安定化を両立できます。
実務例
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外来リハで週1回通院、訪問リハで週2回自宅支援
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高齢患者にはオンライン運動指導で自主トレサポート
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患者の運動記録やADL変化を電子カルテで管理
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訪問看護・介護事業所と情報共有し、入院・施設利用を最適化
これにより、患者の機能低下を防ぎ、地域包括ケア評価加算の取得も可能です。
4.DXと多職種連携が鍵
地域包括ケア・在宅医療では、多くの情報を複数の職種で共有することが求められます。
ここでDXの役割が重要です。
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電子カルテと訪問リハ記録・看護記録の統合
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患者状態のオンラインモニタリング
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薬局・介護事業所との情報連携
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在宅加算や多職種加算の自動管理
DXを活用することで、スタッフの負担を軽減しながら正確で効率的な地域連携を実現できます。
5.地域包括ケア戦略のステップ
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患者層の分析
外来・在宅の患者比率を把握し、地域需要を可視化する。 -
スタッフ配置と業務フローの最適化
看護師・リハスタッフ・事務の役割を明確化し、DXで業務効率化。 -
多職種連携体制の整備
訪問看護、薬局、介護事業所との情報共有ルールを策定。 -
加算取得戦略の策定
在宅医療加算、多職種連携加算、訪問リハ加算などを漏れなく取得。 -
定期的な成果評価
患者アウトカム・収益・スタッフ稼働率を定期的にレビューし、改善を継続。
おわりに:地域包括ケアはクリニック経営の中核
内科・整形外科クリニックにとって、地域包括ケア・在宅医療は単なる報酬加算の手段ではなく、持続可能な経営基盤を構築する戦略です。
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外来+在宅医療のハイブリッドモデル
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DXによる情報管理・業務効率化
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多職種連携による地域包括ケアの実現
これらを組み合わせることで、診療報酬改定後も安定した収益と地域での信頼を両立できます。
地域包括ケア戦略を早期に取り入れるクリニックこそ、今後の高齢化社会で選ばれ続ける存在となるでしょう。
