2025.11.19
クリニック奮闘記
vol.1037 経営理念の有無によるクリニックの違い ― 組織行動学的視点からの考察
経営理念のあるクリニックとないクリニックの差は、単なる「文言の有無」ではなく、組織の行動特性・運営効率・患者満足度において顕著に表れる。本章では、両者の差異を組織行動学的視点で明らかにする。
まず、スタッフ行動の一貫性である。理念のあるクリニックでは、スタッフが判断に迷った際に理念を基準として行動を決定する。このため、患者対応、説明内容、クレーム処理などの業務が統一され、組織全体のサービス品質が安定する。一方、理念のないクリニックでは、スタッフごとの価値観に依存した対応が行われるため「人によって対応が違う」という患者の不満が生じやすくなる。
次に、採用と定着の問題がある。理念が明確なクリニックは、求職者が理念に共感して応募するため、入職後のミスマッチが少なく定着率が高い。理念が存在しない場合、クリニックの方向性が不明確なため、入職後に「思っていた職場と違う」と感じ、早期離職を招きやすい。
さらに、患者からの信頼形成にも差が現れる。理念を掲げるクリニックは、患者がクリニックの特性を理解しやすく、口コミにおいて「このクリニックは○○を大切にしている」という評価が広がりやすい。とくに近年は医療機関選びの基準として「理念・価値観」を重視する患者も増えている。
最後に、経営判断のスピードという点が挙げられる。理念があるクリニックでは、設備投資、新規スタッフ採用、外来運営の改善など、さまざまな意思決定を「理念に沿っているかどうか」で判断できるため、意思決定が迅速である。院長自身の負担も軽減され、組織の成長速度も向上する。
以上から、理念の有無はクリニックの経営安定性に直結しており、理念は組織の価値観を統一し、スタッフ行動、患者満足、経営判断の質を高める重要な要素であるといえる。
