2025.12.22
クリニック奮闘記
Vol.1061 データサイエンスに基づく収益構造の最適化と機能分化
はじめに:医療経営における「勘と経験」からの脱却
令和7年12月22日に確定した2026年度診療報酬改定において、最も顕著な特徴は「データ提出」の義務化範囲が事実上、全医療機関へと拡大されたことである。これは、国が「データに基づかない医療」を制度的に許容しない姿勢を鮮明にしたことを意味する。かつての医療経営において、病床稼働率や外来患者数といったマクロな指標に頼った「勘と経験」による判断は、もはや通用しない。本稿では、データサイエンスの視点から、いかに収益構造を最適化し、地域における機能分化を勝ち抜くべきかを論じる。
1. DPCデータおよび外来データによる「自院の立ち位置」の再定義
今改定では、入院基本料の引き上げと引き換えに、重症度、医療・看護必要度の評価項目が再編され、より「急性期としての実態」が問われる内容となった。ここで重要となるのは、自院のDPCデータや外来データ提出加算に基づくデータを、単なる行政への報告義務と捉えず、経営のベンチマークとして活用することである。 近隣の競合病院と比較して、自院の平均在院日数は適正か、あるいは特定の手術や処置における資源投入量は標準的か。データを多角的に分析することで、自院が「地域で最も効率的に、かつ高品質に提供できる医療サービス」を特定することが、経営戦略の第一歩となる。
2. 「選択と集中」による不採算部門の構造改革
物価高騰と賃金上昇が常態化する中、すべての診療機能を維持することは、組織全体の財務健全性を損なうリスクがある。2026年度改定では、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟の役割がより明確化されており、病院は「高度急性期・急性期・回復期」のいずれにリソースを集中させるかの最終決断を迫られている。 データ分析により、症例ごとの利益率(貢献利益)を算出し、不採算かつ地域的ニーズが低い部門については、思い切った機能転換や集約化を検討しなければならない。これは「縮小」ではなく、生き残るための「最適化」である。
3. KPI(重要業績評価指標)の再構築と生産性向上
診療報酬の改定率がインフレ率に追いつかない現状において、増収策以上に重要なのは「生産性の向上」である。データサイエンスの視点からは、医師一人あたりの医業収益、看護師の業務時間における直接ケア比率、手術室の回転率といったKPIを可視化し、現場へフィードバックする仕組みが必要である。 特に、AIを用いた病床管理システムや、データに基づく人員配置の最適化は、人件費高騰を抑制するための強力な武器となる。「データが語る真実」を組織内で共有し、エビデンスに基づいた業務改善を定着させることが、2026年以降の勝ち残り条件となる。
