Vol.1067 業務の視点から考えるクリニックの事業計画―属人化を防ぎ、安定した医院運営を実現する

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クリニック奮闘記

2026.01.05

クリニック奮闘記

Vol.1067 業務の視点から考えるクリニックの事業計画―属人化を防ぎ、安定した医院運営を実現する

クリニックの経営課題として頻繁に挙げられるものの一つに、「業務が回らない」「特定のスタッフがいないと成り立たない」といった声がある。こうした問題の多くは、個々のスタッフの能力不足ではなく、業務の設計そのものに起因している。年初に事業計画を策定する際には、業務の視点から院内の運営体制を見直すことが、安定した医院経営に直結する。

 業務の視点とは、日々行われている診療・受付・会計・レセプト・電話対応などの業務が、どのような流れで、誰によって担われているかを客観的に捉えることである。多くのクリニックでは、長年の経験や慣習によって業務が形作られており、「なぜそのやり方になっているのか」を説明できないまま運用されているケースも少なくない。

 例えば、ある内科クリニックでは、受付業務と会計業務、レセプト業務の境界が曖昧で、特定の医療事務スタッフに業務が集中していた。そのスタッフが休職した際、他のスタッフは業務内容を十分に把握しておらず、会計ミスや請求遅延が頻発した。結果として患者対応にも影響が及び、院内全体が混乱する事態となった。

 このような事態を防ぐためには、業務を「人」ではなく「作業」として整理することが重要である。誰が行っているかではなく、何を、どの順序で、どの水準まで行うのかを明確にすることで、業務の再現性が高まる。事業計画に業務の視点を組み込むとは、まさにこの整理作業を計画的に行うことを意味する。

 実際に、業務の可視化に取り組んだある皮膚科クリニックでは、受付から診察、会計までの一連の流れを図式化し、各工程にかかる時間と担当者を洗い出した。その結果、診察後の会計処理に無駄な待ち時間が発生していることが判明した。業務の順序を一部変更し、情報共有の方法を見直しただけで、患者の滞在時間が短縮され、スタッフの負担も軽減された。

 業務改善というと、大掛かりなシステム導入や人員増強を想像しがちである。しかし、実際には日々の業務の中に小さな非効率が積み重なっていることが多い。事業計画においては、「どの業務を、いつまでに、どの水準まで改善するのか」を明確にすることで、現場に過度な負担をかけることなく改善を進めることが可能となる。

 また、業務の視点はリスク管理の観点からも重要である。レセプト業務や個人情報の取り扱いなど、医療機関にはミスが許されない業務が多く存在する。業務が属人化している状態では、チェック機能が働きにくく、結果として重大なトラブルにつながる恐れがある。業務を複数名で把握できる体制を整えることは、経営リスクの低減にも寄与する。

 あるクリニックでは、レセプト業務を複数名で分担できるようにした結果、請求内容の相互確認が可能となり、返戻や査定の減少につながった。これは、業務改善が直接的に財務面へ好影響を及ぼした一例である。

 年初の事業計画に業務の視点を盛り込む際には、すべてを一度に変えようとしないことも重要である。業務改善は段階的に進めることで、スタッフの理解と協力を得やすくなる。優先順位を付け、「今年はここまで取り組む」という現実的な計画を立てることが、結果として継続的な改善につながる。

 業務の流れが整理されることで、スタッフは自分の役割を理解しやすくなり、患者対応にも余裕が生まれる。業務の視点から事業計画を策定することは、単なる効率化ではなく、医院全体の安定運営を支える基盤づくりである。