2017.12.08
クリニック奮闘記
Vol.27 犯罪者をつくらない環境
大袈裟なタイトルに思われるかもしれませんが、毎年、数件の事件が私のところに入ってきます。
犯罪の意識も悪気もなく、軽い気持ちで行ったものもあれば、犯罪を認識している場合もあります。
これらの違法行為は、もちろん本人の問題に違いはありませんが、
犯罪が行われる環境を作っている経営者にも責任の一旦がないとはいえません。
法的に責めらないにしても、経営者の管理監督が不行き届きであることには違いありません。
クリニックの中で起こり得る犯罪にはどの様なことがあるのかを検証してみましょう。
事例(1)現金の不正と盗難
Aクリニックの受付は常時2名体制です。1名はカルテ入力、もう1名は会計や電話対応など、
患者対応に関する業務を行っています。
今日も午前診が終了しレジの現金を締める作業をしています。
今日はBさんとCさんの2名が勤務していますが、現金係はいつもBさんです。
日計表とレジ現金を合わせますが、今日も1000円が合いません。
Bさん「1000円合わないわね。釣銭間違いしたみたい。後で院長に報告しておくね。」
Cさん「最近は釣銭間違いが多いね。気を付けないといけないね。」
こんなやり取りが何回かありました。しかしBさんとCさんの組み合わせの時に限って起こることに疑問を持った院長は、いつも現金係をしてるBさんに問い正してみました。
すると横領していることを認めたのでした。
Bさんは横領した金額を返金するとともに、依願退職の形をとりました。
チェック体制の甘さが犯罪の温床になったことは否めません。
現金とカルテ入力はローテーションする様にし、特定の人による業務を止めることにしました。
事例(2)物品の盗難
現金の他に院内の物品の盗難があります。
これはスタッフの場合もありますが、出入りしている業者の場合もあります。
具体的な事案としては、バックナンバーも参照してみて下さい。
物品管理ができていないクリックでは、盗難があっても発覚しにくい環境であるといえます。
医薬品の場合は罪の意識もあるのでしょうが、事務用品や乾電池やトイレットペーパーなどの日用品耗品の場合は軽い気持ちで持ち帰っているようです。
払い出しノートを作成するなど、院内で牽制する仕組みを作ることで、ある程度の改善は可能です。
悪質なのは業者が絡む場合です。
ある日、医薬品の卸業者が物品の納品に来ました。
忙しい外来の時間だったので対応できず、倉庫に入れる様に指示をして業者に任せきりです。
受領書の印鑑も倉庫に保管されており、第三者が検品することもなく受領印が押されます。
これで書類上はクリニックに商品が無事納品されたことになります。
ところが一部の商品を業者が持ち帰り、現金問屋に横流しし販売代金を横領していたのです。
現金問屋は、商品の出所を詮索することをしなかったことが、窃盗の事実を表面化しにくくしています。
対策としては、忙しい時間の納品は断り、納品時にはスタッフが必ず立ち合い検品すること。
同時にスタッフによる不正も防ぐため、検品作業は倉庫内では行わない様にすることです。
衆人監視のもとで行うことで、不正が起こりにくくなります。
(まとめ)
人には「魔」がさす瞬間があります。
現金の横領の場合、最初は数百円から始まり、やがては1万円単位になることもあります。
金額が少ないからと言って見逃すことは、将来の大きな犯罪の火種となります。
業者による物品の横領に関しても、犯罪を起こしやすい(魔が差しやすい)環境を作っているのは医療機関側です。不幸な人を作らない様にチェック体制をつくることは、経営者(院長)の務めです。
Vol.11スタッフの親が来院(https://medical-takt.com/backnumber/2017/report45.html)
Vol.26物品管理と棚卸(https://medical-takt.com/backnumber/2017/report68.html)
メディカルタクト
代表コンサルタント 柳 尚信