Vol.59　退職は連鎖する

「スタッフの離職が止まらない！」の講では、院長の細かすぎる指導方法についていけず退職するスタッ

フの実情をご紹介しました。

本稿では、クリニック内における人間関係だけでなく、組織風土に起因する問題にフォーカスしてみたい

と思います。１００％満足する職場はありません。

どこの職場でも何某かの問題を抱えており、働くスタッフの不平不満は必ずあります。

潜在的な不満足要素が、一人のスタッフの退職により噴出してしまったクリニックをご紹介いたします。

 

Aクリニックには、勤続10年のベテラン事務スタッフのB子さんがいます。

受付事務は正社員のB子さんが全てを取り仕切り、他のパートスタッフをまとめています。

仕事面だけでなく人格的にも優れており、スタッフからは慕われ院長からの信頼も絶大です。

そんな環境で働くB子さんにとっては居心地のいい職場のはずなのですが、本音の部分では人に言えない不

満が鬱積しています。

 

B子　「皆から頼られるのはいいけど、パートさんは時間がきたら仕事を残して直ぐに帰っちゃうし、残業

するのはいつも私ひとり・・・。正社員だからというのが他のスタッフにはある様だけど、仕事に対する

責任感はパートも同じだと思うのだけど。」

 

これがB子さんの本音の部分です。根っからの真面目気質が災いして生真面目に勤務してきた10年でした

が、40歳の誕生日を機に退職することを決心します。この年齢なら、次の職場もすぐに見つかるだろうと

考えてのことです。

 

B子さんがいなくなったクリニックは、パートスタッフを中心にシフトを組み立てていくことになるのです

が、幸い、実務的に困る様なことにはなりませんでした。これもB子さんの指導の賜物であったと院長は考

えていました。

ところが、困ったことに、パートスタッフは時間がくると、今まで通り、仕事を残して帰ってしまうので

す。レセプトの時期になると、A院長が残りの仕事を片付けなくてはならない状態になります。

困惑したA院長は、スタッフ全員に協力を要請したところ、渋々、了承してもらえたのです。

ところが翌月のレセプトの時期に、一人のパートスタッフが退職の意向を院長に伝えてきました。

理由は責任の重い仕事はしたくない、ということなのです。

パートスタッフにありがちな無責任とも思える考えですが、A院長には止めることができません。

更に暫くして2名のスタッフも退職したいと申し出てきたのです。

さすがに、さらに2名退職となるとレセプトだけでなく、受付業務もできない状況になるため、何とかなだ

めて遺留することはできました。

B子さんの退職後、Aクリニックでは何が起こったのでしょうか？

 

（まとめ）

B子さんは長年に渡って、事務スタッフの「扇の要（かなめ）」として存在してきました。

仕事ができるだけでなく人も良かったのですが、逆にそれが災いして、パートスタッフの不平の受け皿に

なっていたのです。自分が我慢すれば・・・・、と一生懸命です。

皆がやり残した仕事を片付けるだけでなく、不平不満の相談相手にもなり積極的にガス抜きを行い

ってきました。そうした努力により職場のいい雰囲気が保たれていたのですが、退職後、残ったスタッフ

は「無責任集団」と化してしまったのです。

今まではB子さんがやっていた仕事が、これからは自分たちの仕事だと定義付けられ、仕事が増えるのなら

、もっと楽なところに行こうと考える様になります。もともと帰属意識が低かったこともありますが、

「扇の要」がとれた後は、浮足立った状態となり、少しの不平不満が、「辞める、辞めたい」という気持

ちを引き起こすトリガーになってしまった様です。

 院長のやるべき仕事としては、スタッフ一人一人に、仕事の本質を説くことが求められます。

本来、経営者がすべき仕事を、今までB子さんに任せていたツケが回ってきたのだと考えるべきかもしれま

せん。

退職者が続くときは（タイミングの悪さもありますが）、職場環境（風土、雰囲気）に原因があると考え

てみて下さい。問題のない職場はありません。経営者（院長）がスタッフと一緒になって、課題解決して

いく職場風土を熟成していきましょう。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント　　柳　　尚信

 

（参考）

Vol.8  信頼しているスタッフが引っ越し、でも継続勤務してもらえることに

https://medical-takt.com/backnumber/2017/report42.html　

Vol.29スタッフの離職がとまらない！

https://medical-takt.com/backnumber/2017/report76.html　

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