Vol.1244 請求した金額は入金されているか ― 窓口収納、未収金、キャッシュレス化から見た収入管理

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Vol.1244 請求した金額は入金されているか ― 窓口収納、未収金、キャッシュレス化から見た収入管理

収入には2つの入口がある

クリニックの保険診療収入は、2つの経路で入金される。1つは審査支払機関を経由して診療月の翌々月に振り込まれる保険者負担分であり、もう1つは診療当日に窓口で受け取る患者負担分である。前者はレセプトとして請求され、返戻と査定を経て確定する。後者は診療の場で即時に確定し、その場で回収される。

経営管理の関心は、圧倒的に前者に向く。レセプトの精度、返戻の減少、査定への対応は、収入管理の中心的な課題として扱われる。他方、窓口収納は「その場で受け取っているのだから問題はない」と見なされ、管理の対象から外れやすい。しかし患者負担分は保険診療収入の3割前後を占め、自費診療を含めれば収入に占める窓口収納の比率はさらに高まる。この経路に未収金の発生、現金管理の漏れ、資格確認の不備が生じていれば、請求した金額と入金された金額の間に、誰も気づかない差が生まれる。

本稿では、収入側の管理として見過ごされがちな窓口収納に焦点を当て、未収金の発生構造、日次の照合、キャッシュレス化の費用対効果を財務の視点から整理する。なお、費用構造については先々週のVol.1232と先週のVol.1240で扱ったため、本稿は収入の回収という反対側の論点を扱う。

未収金はなぜ発生するか

窓口での未収金は、大きく4つの原因で発生する。

第1は、患者の持ち合わせ不足である。予定外の検査や処置で会計が想定を超えた場合、患者はその場で全額を支払えない。第2は、保険資格の問題である。退職や転職により資格を喪失していた保険証で受診した場合、後日レセプトが返戻され、保険者負担分が入金されないだけでなく、患者負担分も本来の額と異なることになる。第3は、公費や医療証の未持参である。小児医療費助成や難病の受給者証を持参しなかった場合、いったん3割で徴収して後日精算するか、患者負担なしで受け付けて後日確認するかの判断が生じる。第4は、自費診療や文書料など、保険外の項目に対する支払いの後回しである。

これらのうち、第2の資格に関する未収は、オンライン資格確認の普及によって構造的に減少した。マイナ保険証による受診であれば、資格喪失は受付の時点で判明する。2025年12月に従来の保険証が使用できなくなり、資格確認書を含めた運用に移行したことで、資格喪失に起因する返戻は以前と比べて明らかに減っている。しかし、資格確認を行っていない再診患者や、確認書の期限切れは残る。受付で資格確認を行う頻度を、月1回ではなく来院ごとに近づけることが、この種の未収を抑える最も確実な方法である。

日次照合という基本

窓口収納の管理の基本は、日次の照合である。その日にレセプトコンピュータが計算した患者負担の合計と、実際に受け取った現金およびキャッシュレス決済の合計を、診療終了後に突き合わせる。差額があれば、その日のうちに原因を特定する。

この作業を行っていないクリニックは少なくない。締め作業を週に1度、あるいは月末にまとめて行っていれば、差額が生じた日も原因も特定できない。差額は「現金過不足」として処理され、その中に未収金の未計上、釣銭の誤り、入力の漏れが混在したまま消える。日次照合は、会計の精度を保つだけでなく、未収金を発生した当日に台帳へ記録する起点でもある。

未収金の台帳には、患者、金額、発生日、原因、連絡の記録を残す。次回来院時に受付の画面に注意が表示される仕組みがあれば、回収の機会を逃さない。来院がない場合の連絡は、発生から2週間、1か月、3か月といった段階を定め、電話と文書を組み合わせる。民法の改正により、診療報酬債権の消滅時効は権利を行使できることを知った時から5年となっており、放置すれば債権は失われる。

皮フ科・形成外科 ― 自費比率と決済手段

皮フ科と形成外科を標榜するあるクリニックは、保険診療に加えて、自費の処置と医療用の外用剤の販売を行っており、窓口収納に占める自費の割合が3割を超える。自費の会計は1件あたりの金額が大きく、持ち合わせ不足による未収が生じやすい。

院長は、自費の施術については予約時に概算費用を伝え、決済手段を案内する運用に改めた。あわせてクレジットカードとQRコード決済を導入し、高額な会計を現金に依存しない体制とした。導入後、自費に関する未収はほぼ消滅し、会計の待ち時間も短縮した。決済手数料は発生するが、未収金の回収に要していた電話と文書の手間、および回収できずに損失となっていた金額と比較すれば、手数料の負担は正当化される。

整形外科 ― 高齢患者と現金の管理

整形外科のあるクリニックは、リハビリテーションのために週2回から3回通院する高齢の患者が多い。1回あたりの患者負担は小額であるが、来院頻度が高いため、会計の件数は1日100件を超える。院長が問題視したのは、未収金よりも現金管理の負荷であった。釣銭の準備、日次の締め、金融機関への入金といった作業に、受付職員の時間が毎日1時間近く費やされていた。

このクリニックは自動精算機を導入し、現金の授受と釣銭の計算を機械に委ねた。導入費用は小さくないが、締め作業の時間が短縮され、現金過不足がほぼ生じなくなった。高齢の患者の中には機械での支払いに戸惑う人もいたため、導入後の数か月は職員が横に立って操作を案内した。現金を扱う作業を減らすことは、キャッシュレス化と同じ方向にあり、患者の支払い手段が現金であっても、院内の現金管理の負荷を減らすことはできる。

小児科 ― 公費と医療証の運用

小児科のあるクリニックでは、乳幼児等医療費助成の受給者証を持参しない保護者への対応が、未収金と精算作業の主な発生源であった。自治体によって助成の範囲と方式が異なり、隣接する市の患者が混在する地域では、受付の判断が複雑になる。

院長は、受給者証を持参しなかった場合の対応を統一した。オンライン資格確認で公費の情報が確認できる場合はそれに従い、確認できない場合はいったん患者負担を徴収し、次回来院時に受給者証の確認をもって精算するという手順である。徴収した額と精算の予定を台帳に記録し、精算の未了が3か月を超えた場合には連絡する。手順を統一したことで、受付職員による判断のばらつきが消え、精算の漏れが減った。医療費助成のオンライン資格確認は令和9年度概算要求でも推進が掲げられており、今後は受給者証の未持参による精算作業そのものが減少していく見込みである。

回収の姿勢が患者との関係を左右する

未収金の回収において注意すべきは、回収の手続きが患者との関係を損なわないことである。持ち合わせ不足による未収の大半は、患者に支払う意思があり、次回来院時に自然に解消する。発生の当日に「次回のご来院時にお願いします」と伝え、記録を残しておけば足りる。連絡が必要となるのは、来院が途絶えた場合に限られる。その際も、最初の連絡は督促ではなく、受診の継続を確認する連絡として行う方が、患者の反応は穏やかである。未収金の回収を目的とした連絡が、通院の再開につながることもある。回収の厳格さと患者への配慮は対立するものではなく、手順を定めておけば両立する。

キャッシュレス化の費用対効果

医療機関におけるキャッシュレス決済の導入率は、厚生労働省が2022年に公表した調査ではクレジットカードが57.4%、QRコードが3.7%であった。その後の数年で導入は進んだと考えられるが、小売や飲食と比較すればなお低い。導入を躊躇する最大の理由は決済手数料である。

2026年8月時点で各社が公表している料率を見ると、クレジットカード決済の標準的な手数料率は概ね2.9%から3.25%であり、中小事業者向けの条件を満たせば1.98%前後まで下がる。保険診療においては、手数料を患者に転嫁することはできない。したがって、患者負担分に対して手数料率を乗じた金額が、そのまま費用となる。

この費用と、キャッシュレス化がもたらす効果を比較する。効果には、未収金の減少、会計時間の短縮、現金管理の負荷の軽減、患者の利便性の向上がある。窓口収納が月に300万円で、そのうち3割がキャッシュレスに移行すれば、手数料は月に2万円から3万円である。この金額を、未収金の減少額、締め作業の短縮による人件費、患者の満足度と比較して判断する。自費の比率が高い科や、若い患者層が多い地域では効果が費用を上回りやすく、高齢患者が中心で現金志向の強い地域では、自動精算機による現金管理の効率化の方が効果が大きい場合もある。

入金サイクルも確認が必要である。決済から入金までの期間は事業者によって数日から月1回まで幅があり、月末締め翌月末払いであれば、その分の資金が1か月間手元にない。窓口収納の即時性という利点は、キャッシュレス化によって部分的に失われる。資金繰りに余裕のないクリニックでは、入金サイクルの短い事業者を選ぶことが、手数料率の差よりも重要になり得る。

「入金の管理」を月次の仕組みにする

窓口収納の管理は、地味で日常的な作業の積み重ねである。しかし、レセプトの精度をどれほど高めても、窓口で回収されなかった金額、資格確認の漏れで返戻された金額、日次照合を行わずに消えた金額は、収入として計上されない。

月次で確認すべき指標は多くない。窓口収納の合計と患者負担の計算額との差、未収金の発生額と回収額、資格喪失に起因する返戻の件数、キャッシュレス決済の比率と手数料額。これらを月次の会議で確認する習慣があれば、収入の入口は2つとも管理下に置かれる。請求した金額が入金されているかという問いは、レセプトだけに向けるものではない。

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