Vol.1257 再審査請求は「泣き寝入り」の反対側にある ― 請求すべき査定の見極めと費用対効果

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Vol.1257 再審査請求は「泣き寝入り」の反対側にある ― 請求すべき査定の見極めと費用対効果

半数以上の診療所は再審査請求をしていない

京都府保険医協会の2024年の審査アンケートによれば、この1年間に支払基金に再審査請求をしたことがある診療所は45.8%、国保では43.0%であった。減点を受けた施設が9割前後に上ることを考えると、半数以上の診療所は、減点を受けても再審査請求をしていないことになる。対照的に、同じ調査で病院は支払基金で85.3%、国保で88.2%が再審査請求を行っている。

再審査請求をしなかった理由として診療所が挙げたのは、「請求内容が誤っていたから」が36.3%で最も多く、次いで「面倒だから」が34.7%、「無駄だと思うから」が22.8%、「査定額が少ないから」が20.0%であった。「悪印象を与えかねないから」という回答も7.4%あった。請求内容が誤っていた場合に再審査請求をしないのは当然であるが、面倒、無駄、少額という理由で見送られている査定のなかには、本来取り戻せたものが含まれている可能性が高い。

自院の査定率を知らない診療所

同じ調査では、1か月の減点額が請求額に占める割合について、診療所の48.1%が0.2%以下と回答した一方、22.2%が「わからない」と回答している。5施設に1施設以上が、自院の査定の規模を把握していないということである。査定の規模を把握していなければ、再審査請求の要否を判断する前提そのものが欠けていることになる。

査定率0.2%という数字は小さく見える。しかし、月間の保険請求額が600万円の診療所であれば月1.2万円、年間で約14万円に相当する。さらに重要なのは、査定の多くが一度きりではなく、同じ診療行為について翌月以降も繰り返される性質を持つことである。1件あたりの査定額の小ささに目を奪われると、年間で積み上がる損失を見落とすことになる。

再審査請求の判断基準

再審査請求をすべきかどうかは、1件あたりの金額ではなく、次の3つの観点から判断することが合理的である。

第1は、査定の事由である。増減点連絡書には査定の事由が記号で示されている。医学的に適応とならない、過剰・重複である、その他医学的に適当でないといった医学的判断に基づく事由の場合は、医学的必要性を示すことで復活する余地がある。一方、算定要件との不一致や点数・計算の誤りといった事務的な事由の場合は、自院の請求に誤りがあった可能性が高く、再審査請求よりも請求方法の修正が優先される。

第2は、継続性である。慢性疾患の定期検査や長期処方のように、同じ患者や同じ類型の患者について毎月繰り返される診療行為が査定された場合、その査定を受け入れることは、今後毎月同じ額を失うことを意味する。この場合、1件の査定額が小さくても、年間の影響額で判断すべきである。

第3は、医学的根拠の有無である。カルテに検査や処方の必要性を示す記録があり、それを症状詳記として説明できる場合は、再審査請求によって認められる可能性がある。根拠となる記録がない場合は、再審査請求を行っても結果は変わりにくい。

病院との差が示すもの

診療所と病院とで再審査請求の実施率に大きな差があるのは、病院が査定と返戻に組織として対応しているからである。同じ調査で、減点・返戻について毎月検討会や学習会を開いている病院は45.6%であったのに対し、診療所では5.3%にとどまった。診療所の71.2%は「減点、返戻の都度検討している」と回答しており、15.1%は「ほとんど対策はしていない」と回答している。

都度の検討は、一見すると丁寧な対応に見える。しかし、1件ごとに判断していると、同じ類型の査定が繰り返されていることに気づきにくい。月単位で査定をまとめて確認し、類型ごとに集計して初めて、再審査請求で争うべき査定と、請求方法を改めるべき査定とが見えてくる。病院が行っているのはこの集計と分類であり、診療所でも規模に応じた形で取り入れることができる。

手続きと期限

支払基金への再審査の申出は、厚生労働省の通知により原則6か月以内に行うよう求められている。期限があるということは、査定の通知を受けてから判断を先送りすれば、それだけで取り戻す機会を失うということである。オンライン請求を行っている医療機関は、原則としてオンライン請求システムから再審査等請求を行う。症状詳記などの添付資料がある場合の提出方法は、支払基金と国保連合会とで異なる場合があるため、所在地の審査支払機関の案内を確認しておく必要がある。

手続きの負担を理由に再審査請求を見送る診療所が多いが、手続きの大半は定型化できる。査定の通知が届いた時点で、事由、金額、継続性を一覧にし、再審査請求の候補を事務職員が抽出する。院長は候補について医学的根拠の有無を判断し、必要な症状詳記を記載する。この分担を月次の業務として定めておけば、1件ごとに判断に迷う時間は大きく減る。

再審査請求の費用対効果を試算する

再審査請求にかかる費用は、主に事務職員と院長の時間である。仮に1件の再審査請求に、事務職員が30分、院長が10分を要するとする。事務職員の時給を1,400円、院長の時間の価値を1時間あたり2万円と置けば、1件あたりの費用は約4,000円となる。これに対し、1件あたり500点の査定が毎月繰り返される類型であれば、年間の影響額は6万円に達する。1件の復活で同種の査定が止まるのであれば、再審査請求の費用は充分に回収される計算である。

反対に、1回限りの少額の査定で、医学的根拠の記録も乏しい場合には、再審査請求を見送る判断にも合理性がある。重要なのは、面倒だから、少額だからという印象で判断するのではなく、継続性と根拠の有無を確認したうえで判断することである。

診療科別の判断例

呼吸器内科のあるクリニックでは、慢性の呼吸器疾患患者に対する喀痰の検査が、回数過剰として繰り返し減点されていた。院長は少額であるとして再審査請求を見送っていたが、事務職員が過去1年分の査定を集計したところ、同じ類型の減点が10名を超える患者について毎月発生しており、年間の影響額は院長の想定を大きく上回っていた。院長が病状の変化と検査の必要性を症状詳記として整理し、再審査請求を行った結果、一部の症例で復活が認められた。さらに、同様の症例については請求時点で詳記を付すようにしたことで、以後の減点は減少した。

皮フ科・形成外科のあるクリニックでは、爪の処置が別の処置に読み替えられて減点される事例が続いた。原因を調べると、病名が審査側にとって処置の必要性を読み取りにくい表現になっていた。この事例は再審査請求で争うよりも、病名の表現と補足を改めることで解決した。再審査請求を検討する過程で、査定の原因が自院の記載にあることが判明するのも、再審査請求の検討が持つ効用である。

再審査請求は審査への「悪印象」を生むか

再審査請求をすると審査で不利に扱われるのではないかという懸念を持つ院長もいる。しかし、再審査請求は医療機関に認められた正当な手続きであり、根拠を示して申し出ることは、審査側にとっても判断の材料となる。むしろ、根拠を示さない請求を繰り返し、査定を黙って受け入れ続けることのほうが、自院の診療が審査側に正しく理解されない状態を固定させる。

再審査請求の結果に納得できない場合には、同一事項について再度の申出が原則として制限されていることにも留意が必要である。だからこそ、最初の再審査請求で根拠を余すところなく示すことが重要になる。カルテの該当箇所、検査値の推移、治療方針の判断根拠を、審査する医師が短時間で理解できる形に整理して添付することが、結果を左右する。

再審査請求の目的は、査定額を取り戻すことだけではない。医学的根拠を言語化し、審査側に伝える過程を通じて、自院の医療が保険診療として正当に評価される状態をつくることにある。

結果を記録し、次の請求に生かす

再審査請求の結果は、復活、一部復活、原審どおりのいずれかとして通知される。それぞれについて、何が認められ、何が認められなかったのかを記録しておくことが重要である。原審どおりとなった事例は、自院の地域の審査で認められにくい取扱いとして次の請求に反映し、復活した事例は、有効だった根拠と詳記の書き方を院内で共有する。再審査請求の記録が蓄積されるほど、請求の精度は高まり、再審査請求そのものの件数も減っていく。

次稿Vol.1258では、査定と並ぶもう1つの審査結果である返戻について、資金繰りと管理の観点から検討する。

 

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