Vol.85 えっ!このタイミングで決算報告ですか?

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2018.03.05

Vol.85 えっ!このタイミングで決算報告ですか?

医療法人であれば法人決算、個人診療所であれば確定申告は、文字通り一年の総決算です。

クリニックの開業当初は右肩上がりの決算を迎えることが多いと思いますが、10年を超えてくると、いい

年度もあれば悪い年度もあります。黒字であれば税金の繰り延べのため節税を検討したいところです。ま

た赤字であれば早期の対応も必要です。資金の手当てが必要な時は個人預金を取り崩して医療法人への貸

付けや、金融機関から融資を受けることを検討しなければなりません。いずれの場合も実行までのタイム

ラグを考えると、前倒しの意思決定をしなければなりません。そのためにもタイムリーな収支報告が求め

られます。本稿では、タイムリーな決算報告について、黒字決算の医療法人と、赤字決算の医療法人のそ

れぞれについて検証してみたいと思います。

 

黒字決算の医療法人Aクリニックの場合

A院長「うちのクリニックの今期の決算はどんな感じになりそうですか?」

税理士「前年度の繰越欠損がありますので、納税は少なくて済みそうです。現在9ケ月分の

             データまで処理できていますが、目途がたちましたらご報告致します。」

A院長「宜しくお願いします。」

 

この後、税理士から決算書の提出1か月前に、申告内容についての報告がありました。

 

税理士「前年の繰越欠損と今期の利益を相殺して、課税所得は500万円になります。納税額は・・・・〇〇

              〇万円です。」

A院長「えっ!納税は殆どないと言っていた記憶があるんですが。そんなに納税するんですか?」

税理士「繰越欠損がありましたから、課税所得は半分になっていますので納税はかなり少なく済んでいる

              と思います。内部留保も溜まっていますので、納税資金も問題ないと思います。」

A院長「本来の納税より少なく済んでいるのは理解できますが、百万円以上の納税が少額であるとは思え

             ません。しかも決算は先月ですよ。私には決算の結果を受け入れる以外に選択肢がありません。

 

決算終了後に納税の報告をされても遅すぎます。

医療法人Aの場合の決算スケジュールについて検証してみたいと思います。

まず、決算期末の2ケ月前(12月決算であれば10月中)までに、決算における医療法人の利益と納税のシ

ミュレーションを行います。その結果を受けて、そのまま期末を迎えて納税するのか、節税対策を講じる

のかを検討していきます。

決算期末2ケ月前にシミュレーションするのは、設備投資のタイミング(決算期末までに納品を完了してお

かなければならない)や、節税対策の実行のための時間を確保すことにあります。

本稿の様に、決算期末を過ぎていれば対策を講じることができず、院長(経営者)としては「納税」とい

う選択肢しか残りません。税理士としては、「納税」がベストだと考えていたのかもしれませんが、最終

判断するのは院長であり、このタイミングでの報告は時期を逸していると言わざるを得ません。しかしな

がら、院長(経営者)としては毎月の収支報告を税理士任せにするのではなく、自らで収入管理、利益管

理はしておいた方がよいでしょう。毎月の収支は、大まかでもいいので把握できるシステム(管理会計)

を院内で構築しておきましょう。

 

赤字決算の医療法人Bクリニックの場合

税理士「今期は赤字決算なので納税の心配はありません。」

B院長「なるほど、駅前に競合クリニックができて医業収入も減ったからなあ。今年は個人の貯金をかな

    りつぎ込んだよ。」

 

この後、税理士から赤字決算で納税も発生しないという報告を受けました。

しかし、これだけでは報告内容としては不足があります。

少し、「赤字決算」の意味を考えてみましょう。

黒字決算であれば、納税後の現預金は医療法人の内部留保として貯金されていきます。

これに対して赤字決算とは、簡単に言うと「資金の減少」を意味します。

つまり医療法人に「お金」がないのです。

納税がないことを報告するのでなく、資金の手当てと財務的な黒字化の方法論を詰めておかなければなり

ません。本稿の場合、期中においても個人預金を貸し付けている様です。いつまでも個人預金を貸し付け

る余裕はありません。もしかすると銀行から運転資金の借り入れが必要かもしれません。役員報酬を含め

た経費の見直しも必要でしょう。この事案の場合、決算での報告ではなく、毎月の収支報告にて、その都

度の対応の検討が求められます。

 

(まとめ)

数字は意思決定を確実なものとするために必要な「ツール」です。

毎月の収支報告を「結果の評価」として利用するだけでなく、「未来に対しての意思決定材料」としても

活用していきましょう。

 

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

  

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