Vol.97　電子カルテじゃなく、患者に目配りしよう

電子カルテは情報処理のツールとして、病院や医療機関の現場で革新的な進歩を遂げてきました。便利に

なった反面、医療スタッフのスキルが機能についていくことができず、カルテ操作に意識が集中してしま

い、患者をみる余裕がないことも指摘されています。これは診療中の医師にも言われていることなのです

が、現場としては、作業に埋没することなく患者の顔を見ることに意識を集中させることが課題として考

えられています。

本稿では受付事務（医療事務）スタッフの仕事にフォーカスして問題点を取り上げてみたいと思います。

 

整形外科のＡクリニックは、1週間前に開業したばかりの一年生クリニックです。地域に整形外科が不足し

ていたこともあり、開業当初から連日、来院患者が途絶えることがありません。そんな中、受付スタッフ

は、初診の患者対応に追われる毎日を送っています。医療事務（レセプト業務）には精通しているスタッ

フが採用できたのはラッキーでしたが、電子カルテ操作には不安があり、入力作業には戸惑っている様子

が伺えます。

 

患者「初診できたのですが。」

受付「少しお待ち頂けますか？　只今、込み合っていますので後ほど、お呼び致します。」

患者「保険証はどうしたらいいですか？」

受付「あ！お預かりしておきます。お座りになって問診票に記入して頂けますか？」

 

こんな感じで、患者の顔を殆ど見ずに、パソコンモニターに向かってカルテ作業をしながら、患者対応を

しています。忙しいのは分かりますが、こんな対応をされた患者はどう感じるでしょうか？

 

待合室にて・・・・・

患者「看護師さん！　おばあさんが転倒してます！　すぐ来てください。」

 

混みあっている待合室では、補助用のパイプ椅子を置いて対応しています。足腰の悪い高齢者も、そこに

座っているのですが、体位を変えようとした時に、椅子ごと転倒した様です。幸い、大事には至りません

でしたが、クリニックとしては、こういう事態は防ぎたいものです。

 

（まとめ）

電子カルテの操作に不慣れなクリニックでは、時々見られる光景です。パソコンモニターを見ているス

タッフは、入口から患者が入ってきても知らん顔。気付いているのか、いないのか。パソコンモニターに

向かっている姿に、「忙しいのがわかるでしょ！」と言わんばかりです。作業に埋没したい気持ちも分か

りますが、患者対応が第一優先です。医療介護はサービス業であることを忘れてはいけません。なおかつ

体調のすぐれない人が診察を求めて来院してくるのです。そういうことを考えると、普通のサービス業以

上に「気配り」「心配り」をしなければなりません。

事例では、待合室で転倒事故がありました。確かに不可抗力の事故はあるかもしれませんが、医療機関の

中での事故はご法度です。防げる可能性のある事故は未然に防がなくてはなりませんが、基本的なスタン

スとしては、絶対に事故は起こしてはいけないのです。

受付スタッフは、電子カルテ入力や患者対応をするのは当然ですが、待合室の患者から目を離さない様に

しなくてはなりません。転倒事故だけでなく、突然、体調を崩される患者も出てきます。具合の悪そうな

患者は、診察室の医師か看護師に伝えなければなりません。

「患者本位のクリニック」を、「患者目線」で考えてみましょう。

 

 

メディカルタクト 代表コンサルタント　　柳　　尚信

 

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