Vol.96 施設基準の引継ぎも忘れずに

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2018.03.20

Vol.96 施設基準の引継ぎも忘れずに

前回、Vol.91 引継ぎ期間は1ケ月?(M&A後の保険請求の遡及手続き)の講では、保険診療の遡及手続き

をご紹介させて頂きました。M&Aによりクリニックを事業承継した場合、従前の経営者の下で勤務実績

を作ることで保険診療の遡及が可能になりますが、施設基準についても同様に遡及することになります。

引き継ぐことが可能な施設基準であれば問題ありませんが、そうでないことも考えられます。また逆に

M&A(事業承継)の前に施設基準を届出しておいた方がいい場合もあります。本稿では、父親のクリニッ

クを事業承継したドクターの失敗事例に学んでみたいと思います。

 

A先生は父親の内科クリニックを継承します。ご自身は小児科が専門なのですが、古くからの患者もいるた

め、子供から大人まで家族全員のホームドクターとなるクリニック作りをコンセプトにしていこうと考え

ています。

 

A先生    「親子継承だから、医師会の手続きも簡単だし、入会金も少なく済むから助 かるよ。」

コンサルタント「3月の廃院手続きと、4月の開設届は同時に出しておきます。保険診療も4月1日からス

                              タートできる様に遡及手続きもしておきます。」

 

Aクリニックは標榜科目を「内科」から「内科、小児科」に変更して届出を提出しました。

ここまでは何の問題もありませんでしたが、A先生は、「あること」が気になり、コンサルタントに確認を

してみました。

 

A先生    「小児科の標榜を出したから、小児科外来診療料の算定は可能だよね。」

コンサルタント「先生、施設基準は出されていますか?」

A先生    「えっ!それは何ですか?」

コンサルタント「・・・・・・・」

 

どうやら、このコンサルタントは「診療所の開廃業の届出」と保険診療の遡及手続きに関しては知識が

あった様ですが、「施設基準の届出」については無防備だったようです。

 

施設基準の届出の期限は毎月1日になっています。事例の場合、4月1日にA先生のクリニックとして開設、

診療スタートしていますので、4月1日に「小児科外来診療料」の施設基準の届出を提出してかなければな

りませんでした。結果として残念ながら、4月は3歳未満の小児に関しては出来高による保険算定となりま

す。(5月1日から算定可能)

父親時代に届け出されている施設基準は以下の通りで、小児科に関する施設基準が提出されていません。

・時間外対応加算・在宅療養支援診療所・在宅時医学総合管理料・在宅がん医学総合診療料

 

(まとめ)

今回の失敗の原因は、届け出を請け負っているコンサルタントの無知によるものでしたが、非常にタイト

なスケジュールの中で処理していきますので、ヒューマンエラーの可能性は付きまといます。予防策とし

ては、父親のクリニックを廃業する前に、前もって引継ぎ後に必要な施設基準の届出をしておくことで

す。開廃業の届出期限は10日ですが、施設基準の届出は毎月1日です。期限の到来が先に来ますので、一

度に終わらせるのなら、開廃業の届出と施設基準の届出を4月1日に届け出完了させなくてはなりません。

施設基準については前もって提出しておけば、10日までに開廃業の届出を提出すればいいことになりま

す。こちらの方がスケジュール的にも楽ですよね。

 

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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世の中に成功体験は数多くありますが、苦労話や失敗談を見聞きすることはあまりありません。クリニックの中で実際に起こった、先生方がこれから経験するかもしれないトラブル事例をエッセイ風に読みやすくまとめてみました。
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