Vol.89　余裕はないけど、採用しておいた方がいい？

数年前であれば、折込求人広告で３０人以上の事務スタッフの応募がありました。ところが現在では、そ

の事務スタッフの応募も少なくなり採用が難しくなっています。さらに実務経験者の応募も激減していま

す。テレビコマーシャルの影響もあって、実務経験のない有資格者の応募はありますが、即戦力の確保が

できていません。これまでにもスタッフの採用については何回も言及してきましたが、本稿では余剰人員

の採用にフォーカスしてみたいと思います。クリニックでは「少数精鋭」のチーム構成が大原則ですが、

精鋭が揃えられない現実と、どう向き合っていくのかを考えてみたいと思います。

 

Ａクリニックのスタッフは次の通りです。看護師は午前2人、午後２人のパートスタッフがローテーショ

ン。医療事務スタッフについては正社員3人（経験者1名、他2人は実務経験が殆どありません）が常時勤務

しています。ギリギリの人数で少数精鋭といえる陣容ではありませんが、助け合いながら日常業務をこな

してきました。看護師は人数的にも充足しているし、医療スキルも申し分ないのですが、医療事務スタッ

フのレベルには不安を抱えています。医療事務の実務経験者がもう一人欲しかったのですが、応募がな

かったため、仕方なく未経験者を採用しています。

ある日、クリニックに一本の電話が入りました。医療事務の求人がないかという問合せです。

お話を聞いてみると、最近、引っ越してきたばかりで家の近くで働けるクリニックを探しているというこ

とらしいのです。

 

Ａ院長「医療事務は3人の正職員がいるからなぁ。経験者は欲しいんだけど、人数的には充足している

              し・・・。3ケ月前なら迷わず採用するのだけど。」

 

（まとめ）

Ａ院長は悩んだ挙句、正職員として採用することを決めました。人数的には充足しているのですが、医療

事務を一人のスタッフに依存している現状への不安が払拭できなかったのです。病院の様に代わりのス

タッフで対応できる体制がクリニックにはありません。Ａクリニックの様に、一人のスタッフに医療事務

（レセプト請求等）の全てを依存しているクリニックも少なくありません。対応策としては実務経験者に

よる院内勉強会（ＯＪＴ）により不足の事態に備えておきましょう。Ａ院長が今回採用する事務スタッフ

に期待することは、院内勉強会の仕組みを整えることにありました。人件費のことを考えると余裕はない

のですが、先々のことを考えると、今のうちに現状のリスク（レセプト請求事務を一人に依存しているこ

と）に対応すべきだという判断を選択したのです。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント　　柳　　尚信

 

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