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2018.03.26

Vol.100 相対取引きは事故のもと

クリニックの事業承継(M&A)や不動産取引において、当事者だけで契約行為を行う「相対取引き」というものがあります。賃貸物件の様にある程度、定型化された取引内容であればそれ程問題になることもなく、発生したとしても限定的な問題で済ませることができます。事業承継(M&A)では有形無形の資産を、「事業」の形で引き継ぐことになるのですが、そこには顕在化していないリスクが内在しています。ネットで検索すれば取引の流れだけでなく、契約書のフォーマットも入手できる時代になりました。一見、当事者だけで契約行為を行うことは簡単にできそうですが、利益が相反する取引相手と、契約書を交わそうとすると、様々な問題が発生する可能性があることも理解しておかなければなりません。

本稿では、そんな「相対取引き」の危うさについてご紹介していきたいと思います。

 

A先生「診療の引継ぎも問題なさそうですね。そろそろ事業承継(M&A)にむけて契約内容をまとめて

    いきましょうか。」

B先生「有難うございます。私はA先生のご希望に沿う形で契約したいと思いますので、宜しくお願いし

    ます。」

A先生「ある程度の希望は、契約書の形にまとめてあるので、後日、お渡しさせてもらいます。」

 

A先生とB先生は同じ医学部のサッカー部の先輩、後輩の間柄です。そんなこともありB先生は全てをお任せしている状態です。事業承継(M&A)におけるA先生の希望は次の通り、ありきたりな内容でまとめられています。

 

・契約金額は〇〇〇万円(事業資産と営業権含む)

・クリニックの引渡は平成30年〇月〇日

・営業資産及び設備については現状有姿で引渡する

 

事業譲渡(M&A)が完了した後に、医療器械が故障したり、エアコンの調子が悪くなったりとマイナートラブルが続きましたが、「現状有姿」による取引なので、B先生の費用負担で修理しなければなりません。

深刻な問題はこの後に起こりました。

A先生が急逝されたのです。事業承継(M&A)は引渡も済んでいるので問題ないのですが、隣地の駐車場(A先生所有)の使用料を巡って、ご遺族とトラブルになっています。

生前のお話しでは、クリニックに隣接している敷地は駐車場として「無償での利用」を許可してもらっていましたが、建物を建築したいので明け渡して欲しいというのです。

B先生の言い分としては、土地の使用料相当分も含めて営業権として支払っているので、正当な権利があるはずだとしています。

 

(まとめ)

事例の場合、AB間においては「何となく」合意が形成されていたことが、善意の第三者に対しては通用しないというものです。隣地の駐車場の使用については、事業承継(M&A)の契約の中で約定に入れるべき内容です。A先生は従前からクリニックの駐車場として利用していたので、患者の便宜も考えてそのまま使用することを許可していました。事業譲渡(M&A)の際に、駐車場の使用権を営業権に含めるという記載もありませんでした。

最終的にB先生は駐車場を明け渡すことになりましたが、駐車場については近隣で確保することができました。相対取引きの場合、当事者同士で話し合いができるうちは通用しますが、相続等によりその権利が継承された場合、「契約書」の内容だけが有効に働きます。

当事者だけでは認識できていないリスクをヘッジするためにも、専門家の仲介による契約をお薦めします。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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