Vol.99　診療科目別利益率（診療単価ではなく利益率で考えよう）

クリニック開業時に事業計画書を作成することの重要性は繰り返しお話ししてきました。

一般的なシミュレーション作成では、「診療単価×患者数」という形で医業収入経営を立てていきます。

診療科目によっては診療単価が異なりますが、設備投資額にも差があります。経営は最終的には「医業収

入―経費＝利益」で表現されます。本稿では、診療単価ではなく利益率による比較を診療科目ごとにみて

いきたいと思います。

 

皮膚科クリニックの開業を検討しているＢ先生は、コンサルタントと事業計画について打合せを行ってい

ます。

 

Ｂ先生　　　　「皮膚科は診療単価も低いし、処方薬もＯＴＣに切り替わっていきそうだから、保険診療

                             に将来性がないですね。美容皮膚科にして自費を中心にした方がいいんでしょうか？」

コンサルタント「自費診療にウェイトを置いたクリニック経営もいいですが、保険診療の良さを今一度、

                              見直してみませんか？」

 

一般皮膚科の場合、診療単価の平均は3500円程度です（院外処方の場合）。内科の4500円と比べると診療

単価の低さは明らかで、そのためにも患者数を診ていかないといけないと考えるのも理解ができます。し

かし「利益率」という観点で考えると、少し視点が変わってきます。

一般皮膚科の場合、診療に必要な機器は顕微鏡のみです。価格にして30万円程度で、しかも基本的には買

い替える必要のないものです。従って患者一人当たりの投資コストとして考えると、限りなくゼロになり

ます。コストとして考慮しなければならないのは、処置に必要な薬剤と診療材料、検査費用です。これら

は合計しても診療コストに対して１％程度です。

つまり3500円の診療コストの99％が利益（3465円）ということになります。

では内科の場合はどうでしょうか？

レントゲン装置とＣＲ、血球検査装置、心電計、エコーを含めると1200万円～1500万円は必要です。耐用

年数5年と考えて一人当たりの患者数のコスト計算では500円程度になります。ここに検査費用は診療コス

トにたいして10％、検査や処置に要する看護師の人件費が一人当たり500円（時給2000円で計算）は必要

です。

つまり4500円－（500円＋450円＋500円）＝3050円となり、皮膚科の利益率よりも低くなります。クリ

ニックの面積も、内科40坪に対して皮膚科25坪であることを考えると家賃負担も少ないということが判り

ます。

 

（まとめ）

保険診療は将来性がないと考えていたＢ先生は眼から鱗でした。自由診療のための設備投資や商材購入費

用と比較しても、保険診療のビジネスモデルの堅調さがよくわかります。

クリニック経営の戦略としては色々な考え方がありますが、最終的にＢ先生は従来型の保険診療ベースの

経営スタイルを選択したのでした。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント　　柳　　尚信

 

（参考）

・支払基金「統計月報」

内科（764点）整形（427点）耳鼻科（442点）眼科（581点）皮膚科（391点）

院内処方、院外処方の区分なし

 

・政府統計の総合窓口「e-Stat」社会医療診療行為別統計

https://www.e-stat.go.jp/stat-earch/files?page=1&toukei=00450048&tstat=000001029602　

 

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