Vol.106 クリニックの後継者問題の考え方 ~スケジュール編~

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2018.04.03

Vol.106 クリニックの後継者問題の考え方 ~スケジュール編~

クリニックを開業して20年を過ぎると、そろそろ事業承継(M&A)を考えなければならなくなってきます。ご子息がいらっしゃる場合もあれば、第三者への事業承継(M&A)を考えなければならない場合もあります。クリニックを開業するときは、ご自身のスケジュールで事業計画を立てることができますが、事業承継(M&A)の場合は相手のスケジュールも考えていかなくてはなりません。本稿ではクリニックの事業承継(M&A)を行う場合の、スケジュールについて解説していきたいと思います。すこし大きな時間軸での話しになるかと思いますが、最後までお付き合いください。

 

Aクリニックの院長は70歳を迎え、クリニックの事業承継問題について真剣に考え始めました。体力的にはまだまだ問題ないので、市民病院で勤務している息子に引き継ぐべく、今の内に段取りしておこうと考えています。A先生のご子息は医学部に進学した頃から、将来的にクリニックを事業承継(M&A)することを考え、父親と同じ循環器内科の専門医です。そのため、個々の患者の引継ぎに当っては大きな問題なく事業継承はできそうです。問題は、「事業承継の時期」にあります。年齢的には45歳ということもあり、内科医としては脂がのっている時期です。

 

A院長「そろそろクリニックを引き継いでもらえないかな?」

ご子息「医局には1年前に申し出るルールになっているから、今からでも来年の4月以降になるよ。でも今

              の病院には赴任してきたばかりだから、今は退職しにくいんだよなぁ。」

A院長「そんなこと言ってたら、いつまでたっても引継ぎできないじゃないか!」

 

こうした遣り取りは、どこの家庭でも少なからず見られる風景です。勤務医と開業医では、医療の内容も変われば、患者の状態も異なります。ご子息にすれば、「父親のクリニックを継承しなければ!」という気持ちと、「もっと勉強したい!」という葛藤もあります。

  

(まとめ)

Aクリニックは出資持分有りの、旧法の医療法人です。ご子息に引継ぎするためには、出資金の譲渡と、理事長変更を行えば完了します。保険診療の遡及手続きや、開廃業に伴う面倒な事務手続きは一切ありませんので、手続き的には直ぐにでもできそうです。親子で話し合いの末、2年後にクリニックを事業承継する方針で決まりました。まずは週2回の外来診療枠を設け、2診体制で運営することからスタートします。少ない時間ではありますが、対外的にはご子息がクリニックを継承するアピールにはなっています。この外来診療枠を中心にして、独自の新規患者獲得を目指します。事業承継で大切なことは、父親時代の患者を引継ぎすることはもちろんですが、ご自身の患者の獲得を目指さなければ、やがてはジリ貧になってしまうということです。これまでの患者は、やがては通院困難になり在宅患者へとなっていきます。こうした患者への対応と別に、新規の外来患者を獲得していかなければなりません。父親の時代とは医療レベルも治療内容も変わってきています。より専門的で高度な医療サービスへの転換を行っていかなくてはなりません。また、新院長になるための準備期間として、認知される時間が必要であるということ。既存患者ではなく新規患者を獲得するための時間も必要であるということ。何よりも新院長が、地域患者の顔を覚える時間が事業承継には必要です。

一般的にクリニックの事業承継(M&A)は、リスクの少ない開業として認知されていますが、患者を引き継ぐという実務の中では、新規開業よりも高度な経営テクニックを要求されるということをお伝えしておきたいと思います。

 

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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