外注すると事務職員の仕事はどう変わるか ― 役割の再設計と、職員への説明の順番

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外注すると事務職員の仕事はどう変わるか ― 役割の再設計と、職員への説明の順番

職員にとって外注は不安の種である

院長がレセプト請求の外注を検討し始めたとき、それを知った職員がまず感じるのは不安である。自分の仕事がなくなるのではないか、自分の能力が足りないと思われたのではないか、いずれ人員を減らされるのではないか。職員への説明が後回しになったり、外注の決定だけが伝えられたりすれば、こうした不安は不信に変わり、職員の離職につながることもある。

外注は、職員の働き方に直接関わる変化である。院長にとっては経費と業務の効率の問題であっても、職員にとっては自分の仕事と職場での立場の問題である。この受け止め方の違いを理解せずに外注を進めれば、請求の質は上がっても、職場の信頼は損なわれる。外注の効果を引き出すためにも、職員の役割をどう再設計するのか、それをどのように伝えるのかを、外注の判断と同時に考えておく必要がある。

外注の目的を最初に伝える

職員への説明で最も大切なのは、外注の目的を最初に、率直に伝えることである。月初の時間外労働を減らしたいのか、受付や患者対応に人手を集中させたいのか、担当者の退職に備えたいのか。目的が明確であれば、職員は自分の役割がどう変わるのかを理解しやすい。

説明の順番にも配慮が必要である。請求業務を中心的に担ってきた職員には、他の職員より先に、個別に説明する。その職員がこれまで担ってきた業務の価値を認めたうえで、外注後に期待する役割を具体的に示す。外注が職員の能力を否定するものではなく、業務の配分を見直すものであることを、言葉と態度で伝えることが重要である。

外注で空いた時間をどこに使うか

外注によって院内の職員が月初の点検や請求データの作成から解放されると、時間が生まれる。その時間をどこに振り向けるかを決めておかなければ、外注の効果は曖昧になる。

最も効果が大きいのは、患者と接する業務に時間を充てることである。受付での待ち時間の案内、予約の調整、電話への対応、会計での説明など、患者の体験に直結する業務は、人手が足りないと真っ先に質が落ちる。外注によって生まれた時間をこれらの業務に充てれば、患者の満足と職員の余裕の両方が高まる。

呼吸器内科のあるクリニックでは、請求業務を一括して委託した後、それまで請求を担っていた職員が、在宅酸素療法を受けている患者や吸入薬を使用している患者からの電話の問い合わせに対応する役割を担うようになった。月初の時間外労働がなくなっただけでなく、患者からの問い合わせへの対応が早くなり、院長が診療の合間に電話に出る機会も減った。

院内に残る請求の役割

外注しても、院内から請求に関わる役割がなくなるわけではない。受付での保険資格や公費の確認、診療当日の病名や算定に関わる情報の整理、委託先からの問い合わせや指摘への対応、返戻や査定の結果の把握などは、院内に残る。特に、委託先との連絡窓口となる担当者を1人決めておくことが重要である。窓口が定まっていなければ、委託先からの問い合わせが院長に直接届いたり、指摘が誰にも読まれないまま放置されたりする。

窓口となる担当者には、委託先からの指摘を整理し、院長に確認すべき事項と院内で処理できる事項とを振り分ける役割がある。この役割は、請求の知識がなければ務まらない。外注後も院内に請求の知識を持つ職員を残しておくことは、委託先との関係を健全に保つためにも、契約を終了する場合の備えとしても必要である。委託先からの指摘を院内で読み、その理由を理解する習慣を持てば、外注の成果は院内の知識としても蓄積される。この点は『研修費はゼロでも教育費はゼロではない ― レセプトOJTの時間効率と人材育成投資の費用対効果』でも触れた。

労働条件の変更には手続きが要る

外注によって職員の業務の内容が大きく変わる場合は、労働条件の扱いにも注意が必要である。2024年4月以降、労働条件の明示事項には業務の変更の範囲が含まれている。業務の内容を変更する場合には、雇用契約や労働条件通知書で定めた範囲に収まっているかを確認し、必要に応じて書面で改めて明示する。

勤務時間や賃金を減らすなど、職員にとって不利益となる変更を行う場合は、原則として職員本人の同意が必要である。外注を理由に一方的に勤務時間を削減すれば、職員の信頼を失うだけでなく、労務上の紛争に発展するおそれもある。外注によって生じた余力は、人員の削減ではなく、業務の再配分によって生かすことを基本とすべきである。

もちろん、退職者の補充を見送り、外注によってその穴を埋めるという判断はあり得る。その場合も、残る職員に業務の負担が集中しないよう、外注の範囲と院内の業務の配分を見直す必要がある。外注が、職員1人あたりの負担を減らすためのものであることを、職員が実感できるようにすることが大切である。

評価の項目も見直す

職員の役割が変われば、評価の項目も見直す必要がある。『評価されない職場から人は静かに去る ― 小規模クリニックの人事評価制度と冬季賞与の設計』では人事評価の設計を扱ったが、それまで請求業務の正確さや速さを評価の中心としていた職員について、外注後は委託先との窓口としての対応、患者対応、院長の補佐など、新しい役割に即した評価の項目を設ける。役割が変わったにもかかわらず評価が以前のままであれば、職員は何を期待されているのかが分からず、意欲を失う。

短時間勤務の職員についても配慮が必要である。月初の請求業務の補助を担っていた短時間勤務の職員は、外注によってその業務がなくなる。その職員の勤務時間を維持するのであれば、代わりに担う業務を明確に示す必要がある。

患者からの問い合わせへの備え

外注は患者からは見えない変化であるが、影響がないわけではない。会計の内容について患者から問い合わせを受けたとき、算定の詳細を把握しているのが委託先だけであれば、院内で即答できず、回答に時間がかかる。患者にとっては、クリニックの対応が遅いという印象になる。

院内の職員が、少なくとも日常的な算定の仕組みと、委託先に確認すべき事項の区別を理解していれば、多くの問い合わせにはその場で答えられる。外注によって院内の請求の知識がすべて失われることのないよう、委託先との窓口となる職員を中心に、知識を院内に残しておくことは、患者対応の観点からも重要である。

診療科別の役割の再設計

整形外科のあるクリニックでは、リハビリテーションの通院患者が多く、受付は朝から夕方まで混雑していた。請求の点検を委託したことで、月初に請求担当の職員が受付を離れる時間がなくなり、混雑する時間帯に受付を2名体制で維持できるようになった。院長は、受付の応援に入る順番を決め、待ち時間の目安を患者に伝える役割を明確にした。

かつて請求を担当していた職員は、委託先との窓口を担いながら、受付の責任者としての役割も引き受けることになった。院長は、その職員の請求の知識が受付での保険資格の確認や会計の説明に生かされていることを評価に反映した。請求の実務から離れても、その知識は別の形で院内の業務を支え続けている。

小児科では、請求業務を委託した後、職員の1人が予防接種の予約管理と接種計画の案内を専任で担うようになった。保護者からの問い合わせに一貫して対応できる担当者がいることで、接種の予約の取り違えが減り、保護者の評価も高まった。

外注は職員の仕事を奪うのではなく、選び直すもの

外注によって職員の仕事がなくなるのではなく、職員が担う仕事の組み合わせが変わる。何を外部に委ね、何を院内で担うのかを選び直すことは、職員の能力を最も生かせる場所に配置し直すことでもある。院長がその意図を明確に示し、職員と共に新しい役割を設計すれば、外注は職員にとっても働きやすさをもたらす変化となる。月初のたびに時間外労働に追われていた職員が、定時に帰ることができるようになれば、それだけで職場の雰囲気は変わる。外注の効果は、数字に表れる部分だけでなく、職員の働き方の変化としても表れることを、院長は意識しておきたい。次稿『委託先をどう選び、どう評価するか ― 開業時の判断から契約の見直しまで』では、委託先をどう選び、どう評価するかを、開業時の判断も含めて検討し、本特集を締めくくる。

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特集「レセプト請求を外注する」の他の回:『レセプト請求を外注するという選択 ― 人手不足と審査支払の再編の年に考える「何を自院に残すか」』、『外注費は高いのか ― 内製の見えないコストと比較する費用対効果の測り方』、『外注しても責任は外注できない ― 請求の責任、個人情報の委託、契約で確認すべきこと』、『委託先をどう選び、どう評価するか ― 開業時の判断から契約の見直しまで』

 

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