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2018.05.07

Vol.130 仕事のできるスタッフ不要論

組織(チーム)において、仕事のできる優秀なスタッフは貴重な存在であることに異論はありません。しかしながら、優秀であるが故に、組織(チーム)全体が機能不全に陥ってしまうことがあるのです。医療(診療)はドクターひとりで完結させることはできません。チームという概念をマネジメント(経営)の中に入れることで、経営の効率化を最大化させるだけでなく、医療の質そのものの向上にもつながっていきます。では何故?『仕事のできるスタッフ不要論』なのでしょうか?そこには個々の業務の精確さ(部分最適)ではなく、経営(マネジメントシステム)における全体最適に視点を置いた考え方に基づいています。

 

Aクリニックは開業後間もないクリニックですが、医療業界に精通した2人のベテランスタッフが院長を支えています。婦長経験者で65歳の看護師Bと、受付スタッフには、レセプト(医療事務)20年のキャリアを誇る45歳のCです。この2人がいることで、院長が安心して診療に集中できるだけでなく、他のスタッフにとっても心強い存在となっています。

 

看護師B「〇〇さんのDM血液検査、診察前にしておきましょう。その方が他の患者の待ち時間も少なくなるでしょうから。」

 

業務の流れとしては、後工程も考慮した適切な指示であると言えます。院内で血液検査が行えるAクリニックでは、診察時に検査データも把握できているため業務フローにはロスがありません。これ以外にも、看護師Bは、細かいことまで一人で、どんどん仕事をこなしていきます。

 

受付C 「今月のレセプト(保険請求)は空いている2診を使って、そろそろ始めるから、受付はお願いね。」

 

電子カルテシステムにより日々の会計は、院長のカルテ入力完了によって終了します。従って院内の受付業務としてはレセプト(医療事務)の知識はなくても問題はありません。そのことが分っている事務スタッフのCは、受付を他のスタッフに任せて、自分の最大のスキルである医療事務(レセプト)を存分に発揮させていきます。そのため、クリニックにおけるレセプト請求(医療事務)は淡々と完璧に処理されています。

 

ご覧のとおり、2人のスタッフの仕事ぶりは院長にとってストレスフリーです。しかしクリニックの経営システムとしては問題があります。まず看護師Bですが、具体的な指示を回りに出すところまではよいのですが、業務処理の効率を考えるあまり、一人で行う業務が増えてしまっています。つまりBしか知らない業務が発生しているのです。医療事務(レセプト)に関しても同様です。ベテランのCが処理するのが効率的にもよいことは分かりますが、これでは他のスタッフのスキルアップになりません。特定の人にしかできない業務を作ってしまうことは、クリニックの経営にとって最大のリスクとなります。

 

(まとめ)

ベテランスタッフがいることで、業務処理の上ではストレスがなくなります。事例の様に日常業務は問題なくこなせていきますが、交代の利く業務分担になっているでしょうか?リーダーシップを発揮して、他のスタッフを引っ張ってくれるのはいいのですが、自分しかできない領域を作られては経営的にはリスクとなります。またこうした状況は、仕事のできるスタッフと他のスタッフとの軋轢も生みかねません。スタッフ間のコミュニケーションギャップはなかなか表面化しにくく、経験の浅いスタッフが育つ前に辞めてしまうことにもなってしまいます。そうすると看護師Bや事務スタッフCの様なスタッフの存在が、ますます大きくなってきます。業務分掌に関しては、院長が組み立てた業務フローに沿って行う様にします。(看護師同士の連携は現場単位で行います)医療事務(レセプト)に関してもベテランスタッフ一人で行うのではなく、必ず2人で行う様にし、OJTにより知識の伝承が行われ様にしなければなりません。

未経験者ばかりでは困りますが、特別仕事のできるスタッフで引っ張っていく院内システムよりも、平均レベルのスキルのスタッフ同士で支え合いながら(連携しながら)、チームマネジメントができる体制の方が、中長期的にみて、院内の業務フローの安定化につながるものと考えています。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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