Vol.129 基本合意締結後のトラブル!

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2018.05.04

Vol.129 基本合意締結後のトラブル!

クリニックの事業承継(M&A)では、基本合意締結までの条件整備には莫大な時間を要します。有形物(モノ)の売買と違って、事業という無形物(事業用資産もありますが)の売買です。「形のないモノ」を「形のあるモノ」に形成し、そこに付加価値を与えて契約に至るのですが、売手と買手の双方は、何処まで行っても「利益相反関係」です。ちょっとしたトラブルで直ぐに誘爆してしまいます。我々コンサルタントは想定されるリスクを顕在化させ、双方が納得できるラインを探っていきます。条件整備を行い、全体感が形成されると基本合意書の締結となります。ここから細部を詰めていくのですが、その過程で思わぬトラブルが発生することがあります。本稿では、売手側のドクターの立場に立って、トラブルの回避方法を検討していきたいと思います。(Vol.123事業承継の相手方は利益相反関係にあるhttps://medical-takt.com/backnumber/2018/report323.html) 

 

医療法人Aクリニックの院長は、クリニック専門のM&A会社の仲介により、B先生にクリニックを事業承継することにしました。30年もの間、地域に愛され続けてきた医療法人の内部留保は1億円を超え現預金も潤沢です。後は退職金を取って、医療法人を空っぽにして営業譲渡するだけです。譲渡日、譲渡金額の擦り合わせ、事業用資産の現物確認などを行い、基本合意書の内容を詰めていきます。その中に、譲渡後にA先生が非常勤で週1回勤務したいという内容があります。縁あってB先生に引継ぎをすることを決めたものの、元気なうちは働きたいという気持ちから出たものです。この項目にB先生は少し不安を覚えたのですが、了承の上で基本合意書を締結しました。この後、AB両先生の併診体制を想定してシミュレーションを繰り替えしていく中で、不協和音が生じ始めました。その結果、基本合意書を締結したにも関わらず、B先生は違約金を支払い契約を破棄したのです。

驚くことに、その数か月後に隣町の新築テナントでB先生が開業したのです。隣町と言ってもAクリニックとは数百メートルの距離です。当然のごとく診療圏もかぶっています。これには穏健なA院長も医師会を通じてクレームを付けましたが、B先生の対決姿勢は変わりません。

 

(まとめ)

クリニックの事業承継(M&A)を行う場合、譲渡契約書の中に「競業禁止規定」というものを明記します。具体的には次の通りです。

「直接または間接を問わず、A医師はBクリニックと同一または類似の診療所を半径5キロ圏内において行ってはならないものとする。」

この様に、通常は売主(A先生)に対して条件付ける条項なのですが、本件の様な場合は契約書等で対応可能でしょうか?結論としては司直の手に委ねることになるのでしょうが、基本合意書の中で「競業禁止規定」を明記しておくことで、一定の牽制にはなり得ると考えています。※実際にクリニックができてしまってからでは、強制力を発揮させるのは難しくなると思います。

事例の様にならない様に、考えられるリスクを契約書(基本合意書)に明記する必要があります。そして取引の相手方(売主と買主の双方に言えます)が信頼に足る人物であるかどうかの見極めも大切ですね。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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世の中に成功体験は数多くありますが、苦労話や失敗談を見聞きすることはあまりありません。クリニックの中で実際に起こった、先生方がこれから経験するかもしれないトラブル事例をエッセイ風に読みやすくまとめてみました。
成功ノウハウを真似るのは難しいですが、失敗のリスクを予見し、軽減することでクリニック経営を安定させることができます。本稿では思いがけないトラブルが連発しますが、「他山の石」として実際の経営に活かしてください。

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