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2018.04.30

Vol.125 事業承継は「相続税」ではなく「所得税」対策が重要!

クリニックの事業承継(M&A)を考える場合、税金を考慮した譲渡スキームを考えなければなりません。その理由は、同じ譲渡金額であっても、受取る形態によって課税関係が異なり、売手側の手取り金額が大きく変わるためです。売手側にとって、譲渡代金は最終的には「相続財産」の一部となるため相続対策(特に医療法人の場合は出資金対策)の必要性が唱えられていますが、その前に「所得税」対策を講じることにより、少しでも手取りを多くすることを考えるべきです。本稿では、クリニックの事業承継(M&A)における税務的な側面に切り込んでみたいと思います。

 

個人診療所の譲渡の場合、事業用資産の譲渡と営業権の発生の2つに大別されます。事業用資産については帳簿価格での取引となるため、基本的に課税関係が生じることはありませんが、営業権は譲渡所得として受け取った全額が課税対象となります。他の所得と合算された税率で課税されることになります。従って、課税所得が大きくならない様に、譲渡時期をずらすことも検討しなくてはなりません。(個人診療所の譲渡スキームは税務的にもデリケートであるため、この程度で終わっておきます。)

医療法人の譲渡の場合は、基本的には出資金の譲渡として処理されます。(持ち分ありの医療法人の場合)出資金の譲渡では、額面金額を超えた部分に対して所得税が課税されます。配当が禁止されている医療法人の場合、内部留保(利益)が潤沢で出資金の評価額が額面の何倍にもなっているケースが往々にしてあります。そこで一般的には、役員退職金を支給することにより、出資金の評価額を下げてから出資金譲渡(M&A)します。退職金として受給する場合、退職所得控除額の適用ができるため、給与所得として受給するよりも少額の納税で済ませることができます。退職金の算定に当たっては、最終月額報酬×功績倍率×在任期間 の算式に当てはめて計算します。功績倍率は類似業種の倍率を参考にしますが、最終月額報酬については、闇雲に増額するのではなく、法人の資金繰り等を考慮しながら計画的に支給しなければなりません。それでは医療法人の場合を例にとって検証してみましょう。

 

理事長報酬  月額200万円 在任期間25年 功績倍率3倍

退職金支給額 200万円×25年×3=1億5000万円

退職所得に対する税額計算

・退職所得控除の計算 800万円+70万円×(25年-20年)=1150万円

・課税所得      (1億5000万円-1150万円)×1/2=6925万円

・税額の計算     6925万円×45%-479.6万円=2637万円

 

(まとめ)

この様に退職金として受け取った場合、事例の場合であれば実効税率は約17%です。給与所得で同額を受給すれば、当然最高税率が適用されますので、その差額の大きさが理解できると思います。

この他にも条件を付与していくことで、様々なバリエーションが考えられます。これは売手側からみた譲渡スキームですが、これを利用して買手から提案することによりM&Aの譲渡代金をディスカウントするということも可能かもしれません。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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