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2018.05.11

Vol.134 親子間継承(M&A)に至る選択肢は3つ!

ご両親のどちらかがクリニックを開業されている場合、事業承継(M&A)のお話しが出た経験をお持ちの先生は少なくないと思います。親の年齢が70歳を越えた頃、ご子息の年齢は40代に入り、医局や勤務先病院でも責任ある立場であることと思います。親のクリニックのことも気になるけれど、勤務先(医局)に対しても恩義があり簡単には辞められない。本稿では、実例を基にして、先生方が取り得る個々の選択肢について検討していきたいと思います。

 

大学病院で内科医として働くA医師は医局長の立場にもあり、ルーティーンの診療業務の他、医局内の雑用などにも追われる多忙な日常を過ごしています。またこれ以外に、同じ市内にある父親のクリニックを週1回手伝っています。最近になってA先生の父親から、クリニックの事業承継(M&A)の話を口にする様になりました。

 

父親 「そろそろ、このクリニックを引き継いでくれないかな。幸い、お前が生活していくには十分な患者も来ている。」

A先生「お父さん、今は無理だよ。医局の仕事も忙しいし、人がいないからね。」

 

こんな遣り取りがありますが、ここから先に話が進むことはありませんでした。ところが、事態が急変したのです。A先生の父親が倒れ、2週間後に仕事に復帰したものの以前の様にバリバリ働けなくなってしまいました。父親からは改めて、クリニックの継承について前向きに考えて欲しいと言われています。A先生も胸の内では、父親が築いてきたクリニックを閉めてしまうことには心苦しさを感じており、前向きに検討し始めていました。暫くして、顧問税理士と話す機会があったので、クリニックの状況や事業承継について相談してみました。

 

A先生「クリニックの事業承継を前向きに考えているのですが、現状を詳しく教えて頂けないでしょうか。」

税理士「年間の医業収入は〇〇〇万円。理事報酬は〇〇〇万円。事業収益としては優良企業ですが、借入金が約1億円あります。事業承継にあたってはこれも継承して頂くことになります。これは土地の購入と建物の新築時のものです」

 

1億円の借入金と聞いて、A先生は尻込みしてしまいましたが、事業承継のリスクの測定を

するために、税理士との話し合いが続きますが、その結果は次の通りです。

・医療法人の事業承継は出資金の譲渡で完了

・1億円の借入金があるため退職金の支給はできない

・理事長交代後は、1億円の借入金に対して個人保証をしなければならないこと

・現状の事業収支では返済まで15年を要する

 

税理士「院長は、A先生が継承してくれると思っていたので、隣地を購入しクリニックを新築しました。私も、継承を前提に銀行から借入することを容認しましたが、最終的に継承するのはA先生です。」

 

A先生「私の取るべき選択肢は3つ・・・・。」

・1億円の借入金を背負ってクリニックを継承する

・医局に残り勤務医を続ける

・他の場所で開業する

 

クリニックを継承しないという選択肢を取った場合、借入金は最終的に生命保険で完済することになります。継承する場合は、A先生が頑張って返済していくことになりますが、今のままの収入では限界があります。

 

A先生「15年で完済しよとすると、どれくらいの収入、利益が必要ですか?」

税理士「理事報酬を〇〇〇万円にすることを前提に、医業収入は今の2倍必要です。」

A先生「クリニック2件分の規模だね。僕にできるかなあ。」

 

(まとめ)

現在、勤務医であるA先生が取るべき選択肢は3つあります。お金の心配をしない生き方もありますが、敢えて苦労する方を選択しクリニックを継承する道を選びました。医局とも円満退職できたことも幸いし、大学病院からも紹介患者があります。クリニックの継承当時は、自分の給料も自由に取れませんでしたが、5年経過した今、父親の助けもありますが借入金の殆どが返済されています。

 

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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