2018.04.10
クリニック奮闘記
Vol.111 自己資金がなくても開業できる!?
人生の中で大きな買い物といえば、住宅購入が思い浮かぶと思います。数千万円の買い物なので、当然、銀行から借り入れを行うことになりますが、少しでも返済を少なくするために、コツコツと貯金をしながら自己資金を貯めた経験のある先生方も多いと思います。同じ様にクリニックを開業する際にも、自己資金が多いに越したことはないのですが、タイミング悪く自己資金が十分でないこともあります。人生最大のチャンスを逃さないためにも、何とか資金調達できないものでしょうか。本稿では、そんな自己資金が心許ないドクターのクリニック開業について考えてみたいと思います。
皮膚科医のA先生は将来設計の一つとしてクリニックの開業を考えています。ネットで何気なく開業物件を調べていたところ、新規のクリニックモールの企画物件を見つけました。自宅からも近いし、近隣には皮膚科の競合クリニックも少ないことを考えると非常に魅力的です。しかしA先生は自宅を購入したばかりで、手元に貯金が全くありません。しかも来年は子供の中学受験が控えており、塾代や学費を考えると余裕がないことは火を見るより明らかでした。
A先生「この医療モールで開業できたらいいなぁと思っているんだけど、どう思う?」
妻 「貯金もないし、来年からの子供の学費を考えると、余裕がないわね。生活費を切り詰めないとい
けない状態は、ちょっと勘弁して欲しいんだけど・・・。」
A先生お奥様は、終始こんな感じで開業には反対している様です。諦めきれないA先生に朗報が入ります。ある会計事務所が主催している勉強会のテーマが『自己資金がなくても開業できる!?』と、まさにA先生のニーズにドンピシャです。早速、勉強会に参加したA先生は、自分が心配していたことの全てが払拭され、開業準備に取り掛かることとなりました。
(まとめ)
自己資金が必要な項目は次の通りです。殆どの支払いは開業後に発生しますが、その前に支払う必要のある項目です。
・不動産物件の手付金として保証金相当(賃料の6ケ月から1年分)
・物件の仲介手数料(賃料の1ケ月分)
・開業までの空家賃(着工から開業までの賃料→3ケ月から6ケ月)
・内装工事にかかる着手金及び中間金(工事費用の30%程度)
※予算としては高目の設定にしています
こうしてみると1000万円以上の自己資金が必要であることが分ると思います。
では、この1000万円をどの様に調達するのでしょうか?
これらの費用は事業予算の一部としての費用です。内科クリニックの開業であれば、運転資金を合わせて6000万円~7000万円。事例の皮膚科クリニックの開業では5000万円~6000万円が必要です。
銀行交渉の段階で、必要資金の総額の借入を申込みますが、開業までに必要な支払分については一部、前倒しで融資してもらいます。
(例)総額6000万円の借入を銀行から資金調達します
・開業までに必要な資金1000万円については、「手形貸付」で調達。この際、融資に対する支払利息が発生しますが、1000万円から差引かれた金額が振り込まれてきますので、手元から支払う必要はありません。
・開業時に総額6000万円の借入を「証書貸付」として資金調達し、ここから手形貸付の1000万円を返済し、残金の5000万円から残りの支払いを済ませ、更に残金が運転資金として確保されることになります。
この様に自己資金がなくてもスキーム的には資金調達は可能ですが、金融機関からは貯金ができていない理由の説明を求められます。ドクターの場合、1000万円から2000万円程度の給与所得がありますので、貯金ができていないことに対する正当な理由がなければ融資を受けることは難しくなります。いずれにしても、コツコツと貯金はしておくに越したことはありません。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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