2018.04.11
クリニック奮闘記
Vol.112 銀行に担保供与を求められたら?
銀行から事業融資を受ける場合、有担保による融資が基本ではありますが、クリニック開業の場合は無担保融資商品もラインナップされています。具体的な条件となると、有担保融資の方が金利や返済期間の面で優遇されていますが、さりとて自宅以外に不動産を所有しているドクターは少数派です。殆どの場合は賃貸、自己所有の自宅があったとしても住宅ローンと紐付きのため、担保価値としては100%ではありません。開業時の融資申し込みで有利に交渉するためには、どの様に対応すればいいのでしょうか?本稿では住宅ローンの付いている自宅を担保にした借入方法について、具体的な事例を紹介してみたいと思います。
皮膚科医のA先生はクリニックモールでの開業に向けて、銀行の融資担当者と融資交渉に入りました。自己資金の不足分については、つなぎ融資として手形貸付で1000万円を前倒しで借りることがでそうです。(Vol.111 自己資金がなくても開業できる!?)
ここから融資担当者の提案がありました。
融資担当者「今回の事業融資は無担保融資でお話ししてきましたが、ご自宅を担保にすることはできませ
んか?」
A先生 「住宅ローンの抵当に入っていますが、大丈夫なんでしょうか?」
融資担当者「いくつかの提案ができそうなので、これからお話しさせて頂きます。」
銀行からは2つの提案がありました。
・2番抵当でもいいので自宅に抵当権を設定させて欲しい
→担保価値としては評価できないが、今後も継続的に関係を繋ぐためと考えられます。金利面での若干の
優遇の提案がありました。
・住宅ローンの借り換え
→事業融資と住宅ローンの両方を取り扱うことで、金融機関としては取引残高が増えることになるし、自
宅担保についても1番抵当が設定できる。住宅ローンの金利は少しアップになりましたが、事業融資の金
利優遇と返済期間の延長の提案がありました。
(まとめ)
A先生は住宅ローンの借り換えも含めて、事業資金を借入することにしました。住宅ローンの金利は若干アップするものの、事業融資とのトータルで考えた場合、当初の条件よりもキャッシュフローが改善されるためです。クリニック経営が軌道に乗ってくれば、経費性のない住宅ローンから繰り上げ返済していき、可処分所得(キャッシュフロー)を増やしていく方針で決定しました。自宅担保で融資を受けることに抵抗感がある先生もいらっしゃいますが、金融機関としては自宅を担保供与することによる「先生方の覚悟」も伺っています。
クリニックに対する資金貸付は、リスクの少ない商品と位置付けられているため、多少の条件交渉の余地はあります。交渉の最終局面では、この様に「心理戦」の展開が予想されます。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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