2018.04.24
クリニック奮闘記
Vol.121 開業を決めたドクターの決意
クリニックを開業するとは、事業を起こす(起業)ことです。ひと昔前であれば、開業すれば誰もが成功していた時代とは様変わりし、少なからず「経営」の概念を取り入れなければクリニックを継続して運営していくことが難しい時代です。開業を考えている先生方も、開業した後にクリニックを流行らせることの難しさを理解し始めた様ですが、頭で理解していることと実際は、大きな隔たりがあります。本稿では、実際に「開業する先生」と「開業を考えている」段階の先生の、考え方や行動力の違いについて考えてみたいと思います。
開業を考え始めた二人のドクターを並列に追いかけて行きます。A医師は医局人事に翻弄される毎日に嫌気が差し、開業のための情報収集を始めました。この1年の間にコンサルタント会社の開業セミナーに参加することもしばしばで、医療関連業者から物件情報も入手しており、かなり具体的な段階まで煮詰まってきています。提案を受けている物件はかなり魅力的でしたが、A医師は「ある一点」についての迷いが払拭できないでいます。
A医師 「事業投資の総額が7000万円で、自己資金を除く6500万円は借入とリースか。大きな投資だ
な。」
コンサル「開業当初は患者も少なく赤字が続きますが、この立地であれば1年後には黒字になりますし、2
年後には、これだけのキャッシュフローができますよ。」
A医師は、コンサルタントが示す事業計画を眺めながら、事業の難しさをひしひしと感じている様ですが、不安を払拭してくれる提案を待っている様にも見えます。同じ物件の提案を受けているB医師を見てみましょう。
B医師 「借入の返済期間は20年だから、毎月の返済額も抑えられているから、赤字期間のキャッシュフ
ローには問題なさそうだね。」
コンサル「不安であれば、運転資金をもう少し借りられる様に、銀行交渉してみますが。」
B医師 「そうしれくれるかな。低金利でも借入が1000万円増えることのプレッシャーは大きいけど、1年
半で患者数を40人平均にすれば問題ないだろう。」
(まとめ)
二人の先生にアプローチをしていたコンサルタントでしたが、最終的に開業を意思決定したのはB医師でした。二人の医師の違いは何処にあるのでしょうか。A医師は開業に対するリスクに敏感に反応しています。経営はリスクとの闘いなので、健全な反応であると言えます。しかし開業をするという最終決定ができなかったのは、「決意の欠如」です。事業計画を作るのは簡単ですが、それを具現化していくのは経営者となる医師本人です。計画は目標以上に上手くいくことは少なく、逆に障害の方が多いものです。同じ情報を持ったB医師が開業の意思決定ができたのは、マイナス材料をプラス材料に転換しようという思考が働いていたことにあります。逆にA医師はマイナス材料を不安材料として捉え、自分で改善しようとしていませんでした。自助努力、自己責任で進んでいこうとするB医師と、他人への依存体質が抜けていないA医師とでは、気持ちの持ちように大きな差があります。
クリニック経営が上手くいくか否かは、実は開業前から決まっているのかもしれません。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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