2018.03.16
Vol.94 自由診療の値決め(ネット広告の金額)
保健医療という枠組みを外し、自由診療に商機を見出すのもクリニック戦略の一つの選択肢です。美容形
成外科、美容皮膚科だけでなく、頭皮専門クリニックやアンチエイジング、健診クリニックなど、拾い出
してみると結構な領域に及んできました。保険診療と自由診療の違いの一つに提供商品に対する「値決
め」があります。保険診療の場合は全国一律の「公定価格」ですが、自由診療は「言い値」が通る世界で
す。と言ってもサービスと対価が見合っていることが大切なのですが、そこを決めていくのは院長(経営
者)です。本稿では自由診療における料金設定について、実際の事例に基づいてご紹介していきたいと思
います。
皮膚科クリニックを経営している女性医師のA先生は、念願のレーザー治療器を購入しました。汎用タイ
プの器機で、簡単なシミ取り、タイトニングから脱毛まで、器機に接続するヘッドを交換することで、そ
れぞれの症状に対応します。看護師にもモニターになってもらい院内で練習を繰り返し、自信も出てきた
ので、来月から施術の予約を取っていこうということになりました。
スタッフ「先生、料金はいくらにすればいいですか?」
A先生 「そうね、近隣の相場も知りたいし、ネットで調べて決めようと思います。」
ということで早速A先生は、競合すると思われる近隣クリニックの「取り扱い商品」と、それぞれの料金
をネットで調べ、そこから5%程度ディスカウントした料金に設定しました。
少しではありますが、「地域最安値」となるため、A先生もスタッフも期待に胸が膨らみます。ところが
待てど暮らせど、予約が入りません。
A先生 「他のクリニックでは、同じ内容のサービスが、ウチのクリニックより高い料金で売れているの
に、どうして問合せの電話もないのかしら?」
スタッフ「先生、〇〇クリニックのシミ取りレーザーの料金ですが、こちらのクリニックよりも安いみた
いですよ!」
(まとめ)
A先生は、人づてに競合クリニックの料金を調べてみたところ、ネットに掲載されている金額と乖離があ
ることがわかりました。ネットで掲載されている料金は、競合クリニックが見ることを想定して定価で掲
載していました。実際にはリピーターを獲得するための割引や、紹介があれば特典を付けたり、来院時に
サービスをしていたのです。利用者は広告掲載されていない料金に「お得感」と「特別待遇」を体感して
いたのです。
これも広告戦略の一つとして用いられる手法なのですが、A先生はまんまと引っ掛かってしまいました。
「経営は値決め」と言われる程、料金設定は難しいものです。家電の量販店でも他店の販売価格を気にし
ている様に、少しの金額差が客足にも影響するほどです。ネット広告を鵜呑みにすることなく、生の利用
者(患者)の声を聞きに行く努力をしていきましょう。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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