2018.08.02
クリニック奮闘記
Vol.193 家庭の事情?スタッフ採用の落とし穴
求人する側と求職側と、面接の時には『化かし合い』だという人がいます。表現は適切でないかもしれませんが、いい人を採用したいと考える事業所側と、何とか就職したいと考えている応募者の心理状況からは、一定の駆け引きが生じるのは当然のことでしょう。本稿では、採用面接時に合意していた条件が、採用後に変更を求められたケースをご紹介したいと思います。
A先生は2ケ月先にクリニックのオープンを控え、現在、スタッフの選考を行っています。幸いなことに、多数の応募があり、最終面接で5人の看護師と、8人の事務スタッフの選考を行うことになりました。全ての診療時間に不足なくスタッフが配置できる様に、事前アンケートで情報収集し面接を行っていきます。多少の余剰人員にはなりますが、看護師は全員採用し、事務員は1名の正社員と4名のパートスタッフを採用することとなりました。
それから暫くしてオープン前の研修が始まりました。初日はオリエンテーションで、A先生の挨拶と所信表明を行い、その後にスタッフの自己紹介です。一通りの挨拶が終了したところで、個別面談で勤務形態の確認を行い雇用契約の締結です。ある事務スタッフの面接の時の出来事です。
事務スタッフ「先生、主人と話していたんですが、子供がまだ小さいこともあって、午後勤務を外してほしいんですが・・・・。」
A先生「今になって言われても困るなぁ。週1、2回だけでも入ってもらえないかな。」
事務スタッフ「主人と話し合った結果なので、お願いできないでしょうか?」
A先生「困ったねえ。」
多少の余剰人員を確保しての採用計画でした、午後勤務を全て断わられてしまっては勤務シフトが成り立ちません。A先生としては他のスタッフに相談し、何とか週2日だけはカバーできることになりましたが、残り2日に関してはシフトが埋まりません。苦肉の策として、面接時の不採用者の中から何とか採用できたので事なきを得ましたが、冷や汗ものでした。
(まとめ)
この様な場面は実はよくある話です。家庭の事情なのか、もともと午後勤務をする気がなかったのかは分かりかねますが、午後勤務のスタッフ採用については注意が必要です。まず、夜診帯の残業勤務が可能な家庭環境が整っているかをみてみます。親御さんに預かってもらうという場合は要注意です。本人以外の事情により断られる可能性を生み出してしまうからです。採用面接時、個別面談時の判断基準は、双方が妥協できる最低ラインで意思決定することです。その結果、過剰人員になることもありますが、欠員リスクよりは許容できます。あらゆる経営判断に言えることですが、希望的観測ではなく、現実的な見地から判断する様にしましょう。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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